小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

331 中欧の旅(5) ビールの本家争い

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「あなたの馬は健康的ですよ」。チェコプラハの市民はアメリカのビール、「バドワイザー」の味を聞かれると、こう答えるそうだ。 バドワイザーの味は、馬の小水のようなものという意味なのだそうだ。汚い話になるが、アメリカのバドワイザーは馬の小水の色であり、味もそんなものだと揶揄しているのだろうか。なぜなのか。チェコには、中世から飲まれている「ブドヴァイザー」というビールがあり、これが本家であり、味も問題としないという誇りがあるからだという。 もともとプラハでは11世紀にはビール醸造場があり、ビルセン産のビルスナーは多くの国で知られている。さらに、南ボヘミヤ産のブドヴァイザーもうまいビールとして売り出し、それをドイツ人がアメリカでバドワイザーの名前をつけて生産し、宣伝力、資金力の違いでいつしか後者の方が世界的にも有名なビールになってしまった。
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しかし、プラハの市民に言わせると、味は全く違っていて、アメリカのバドワイザーは馬の小水と同程度の味なのだという。それはブラックユーモアにしても、濃厚なチェコのビールとアメリカのビールは比較にならないくらいの差があるように思えた。 プラハで昼食に中華料理店に入った。料理の前に小ビールと水を注文すると、ビールは1ユーロ(約170円)、水は倍の2.5ユーロだった。中欧の他の国でもビールと水の値段はあまり変わらなかった。それほどに、水が貴重なのだろう。
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中欧の帰りに、ロンドンのヒースロー空港のラーメン店で日本のビールを久しぶりに飲んでみた。日本でも1、2のシェア争いをしているビールだが、味が薄くてうまいと感じなかった。チェコのビールが飲みたいとつくづく思った。日本のビールは大麦とホップのほかに米やコーンスターチも入っているが、チェコのものは大麦とホップしか使わない。
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中欧は9月中旬、街路樹の菩提樹マロニエトチノキ)が少しずつ色づき始めていた。これから秋の色が次第に濃くなっていくのだ。オープンカフェでお茶やビールやワインを楽しむ市民を各地で見た。乾いた空気の中でビールを味わえる市民がうらやましい。