小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

270 あなたは依存夫? 人生の秋に

広告代理店、マッキャンエリクソンが大量定年時代を迎えている団塊の世代の男性を対象にした調査結果を発表した。その調査では「依存夫」と「自立夫」という表現で、団塊の世代の傾向を示しているが、依存夫が約60%という数字を見て「まあそうだろうな」と思ったものだ。

それは彼らが生きてきた時代を考えるうえで、とても参考になる。

2つの言葉の意味はこうだ。依存夫というのは、会社や職場の人間関係に依存しており、仕事人生を歩み、家庭生活・子育てへの介入が少なかった人。一方、自立夫はプライベートで自分の趣味や人間関係を持ち、リタイア後ライフスタイルイメージをしっかり持っている人だそうだ。

調査の結果、依存夫は59・9%、自立夫は40・1%だった。前者の人たちは「リタイア後の人生設計をしっかり考えられていない。趣味が少なくあえていうとゴルフくらい。できれば仕事を続けたいと考えており、休日は家でごろごろすることが多い。料理などの家事は苦手」というのが大きな特徴だ。

後者は「リタイア後の計画や夢を持ち、休日の趣味の時間を大切にしている。妻との共通の趣味を持ち、会社以外の友人との交友関係を持っていて、家事への参加意識も高い」等々、前者とは逆の傾向を持つ。

団塊の世代は、いまさら言うまでもなく、戦後のベビーブームに生まれ、高度経済成長を支えてきた「競争社会」の申し子である。それゆえ家庭よりも会社の方が大事という男性も多かったのではないか。その結果がマイナスイメージの強い立場に追い込まれているのだから、多数を占める依存夫たちは虚しいとしかいいようがないだろう。彼らの嘆きの声が聞こえてくるようだ。

海外を旅行すると、多くのシニア世代の人たちが楽しそうに旅をしている姿を目にする。そうした人たちは、リタイア後の人生設計をきちんと持ち、ゆったりとした時間を送っている。しかし、団塊の世代だけでなく多くの日本男性は会社人間としての生き方を脱却できずにいる。それは、敗戦の荒廃から経済大国にまで成長した戦後の日本社会が背景にあると思う。会社のために猛烈に働く、趣味に走るのは仕事のできないだめ人間という考え方が大手を振った時代が確かにあったのだ。それを責めることはできない。

周囲にいる団塊の世代の男性に、あなたはどうですかと聞いてみると、意外や意外「自立夫」の方の項目の方が多かった。趣味もいろいろあり、料理もやるというからリタイア後も奥さんから「粗大ごみ」扱いされる心配はないようだ。

人生を季節に例えると、幼児期から少年・少女期が春、青年期から壮年期は夏、熟年期が秋、老人期が冬といえよう。団塊の世代はいま人生の秋を迎えているのだ。それは収穫の秋であり、紅葉が美しい季節でもある。これから人生の晩秋から冬へと進む中で、楽しみは多いはずだ。調査を読んで「依存夫よ、しっかり」と応援したくなった。