小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

216 昨今スポーツ事情 感心しない駆け引きの横行

日本ではマイナーなスポーツといわれるハンドボールがいま注目を集めている。この夏の北京五輪のアジア予選をハンドボール国際連盟(IHF)やり直すよう求めたのに対し、アジア連盟(AHF)が拒否したからだ。

やり直し拒否を決めたAHFの常任理事会には日本は呼ばれず、五輪出場が決まっていたクウェート出身の3人の理事らが上部組織の決定に異議を唱える決定をしたのである。「勝てば官軍」という言葉が明治維新から使われているが、最近のスポーツ界もこの言葉がまかり通っているようで、感心しない。

ハンドボールのアジア予選は、昨年9月に愛知県豊田市で開催され、クウェートが1位、2位が韓国、3位日本という結果となり、クウェートの五輪出場が決まった。しかし、この予選で日本、韓国ともクウェートと対戦した際、シュートを反則にして次々に退場させるなど、クウェートびいきの審判による「中東の笛」といわれる不可解な判定が相次ぎ、日韓が共同してIHFに抗議した結果、再試合が決まった。

しかし、クウェートの王族が仕切っているというAHFは、日本の理事を呼ばずに理事会を開いて、再試合を拒否したというのである。それほどまでして五輪に出場したいのかと私は思うのだが、いまや国威発揚の場になっているから、さまざまな手段を使ってでも、目的を果たそうとするのだろう。だから問題の解決はそう簡単ではない。

この問題に限らず、スポーツの世界の駆け引きにはうんざりする。スキーのジャンプ競技で日本選手が大活躍をしたと思ったら、板の長さを身長に応じて決めるというルール改定があったことは記憶に新しい。身長の高いヨーロッパ選手が有利になり、ルール変更後日本人選手は好成績を残すことが少なくなった。

1998年から国際柔道連盟が国際大会でカラー柔道着(従来の白にブルーを加える)を導入したのもその一例かもしれない。誤審防止、観客からみて分かりやすいというのが理由だが、途上国では柔道着1着は大人の1ヵ月の所得よりも高いというのだから、途上国の選手が白に加えて、ブルーも用意するのは容易ではない。どうみても先進国中心ルール変更だと思わざるを得ない。

いま、スポーツ界はプロとアマチュアの境界線がはっきりしなくなった。かつて、五輪は参加することに意義があるといわれた。しかし、昨今の五輪からはアマチュア精神という言葉は消えてしまった。サッカーや野球、テニス、バスケットボールなどプロ選手の出場も認められた競技もあり、マラソンのQちゃんこと高橋尚子選手がアマチュアと思っている人はほとんどいないだろう。プロもアマも勝つことが至上命題なのである。

野球の五輪予選で、韓国チームが一度出した出場メンバーを直前に大幅変更したケースも、勝つためには手段を選ばないという姿勢の現われだった。そんな相手に対し、どう対応するか。基本は実力を高め、相手に有無を言わせない勝ち方をすることだろう。スポーツはフェアプレー精神が一番大事なのである。