小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

162 世界遺産ミルフォード・サウンドで虹を見る NZの南島にて

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「北海道の然別湖と似たようなものだな」と、半ばばかにしていた。それが間違いと気づくのに時間はかからなかった。世界遺産「ミルフォード・サウンド」(ニュージーランド)の船の旅は、強烈な印象を私に与えたのである。 映像や写真では味わうことができない感覚、それは現場でしか体験できないものなのだと、思い知らされた。ミルフォード・サウンドはあらためて紹介するまでもなく、ニュージーランドでは「マウント・クック」と並び称される代表的な自然遺産である。 ウィキペディアによると、タスマン海から15キロ内陸まで続き、1200メートル以上の断崖絶壁に囲まれたフィヨルドである。年間でも雨の日が多いといわれるほど降水量が多く、雨が降る度に無数の滝が出現するのだ。中には、長さ1000メートルを超える巨大な滝もある。 私たちは南島のリゾート地、クイーンズタウンからバスで現地に向かった。文字通りいくつもの野を越え、山を越えて約300キロ。そこに氷河を抱いた山々があり、ミルフォード・サウンドフィヨルドがあった。途中、雪に見舞われた。これでは現地は雨かという不安が広がった。だが、目の前の空は真っ青に晴れ渡っていた。 「こんな天気はそんなにありません」と、ガイドさんの声が弾む。観光船に乗り込む。用意された弁当は和食弁当だった。世界遺産目当てに日本からの観光客がいかに多いか想像がつく。観光船の船長が舵をとりながら、船内放送で案内をする。それを日本人の若い女性が日本語に通訳する。日本人の団体が乗船した際のサービスのようだ。 船長が船を断崖に近づけた。雨上がりのため、大きな滝が激しい水しぶきを上げている。そこから大きな虹が出現していた。歓声があがり、カメラのシャッターが切られ、ビデオを構える観光客たち。私もその一人だ。
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滝を離れタスマン海に出て船はUターンする。すると、岩の上に3匹のアザラシが寝そべっている。ここはアザラシのほか、ペンギンやイルカも生息しているといわれるが、私が目にしたのはアザラシのみだった。 約1時間のミルフォード・サウンド観光は、冒頭に書いたように当初は北海道の然別湖に毛が生えたようなものだと思っていた。しかし、船が進むうちにその圧倒的な自然の驚異に浅はかだったと反省した。 この美しい世界遺産も観光化により、環境破壊が問題になっているという。2004年には観光船から軽油が流出して、一時立入禁止になった。人は美しいものや歴史的建造物を見たいという思いが強い。その思いをかなえるには、環境破壊からこうした世界遺産を守るための知恵が必要なのだ。(2007.9.11)