小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

155 白い恋人のおごり 名物の転落

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土産物で一番人気は、三重・伊勢の「赤福」で、次いで北海道・札幌の「白い恋人」と、長い間いわれてきた。「白い恋人」は、まさしく北海道土産では軽い味、手ごろな値段が重なって、ナンバー1の座を占めてきた。 名前がいい。かつての冬季五輪・グルノーブル大会の記録映画「白い恋人たち」をヒントにしたのではないかと思われるが、このネーミングはよかった。いつしか北海道を代表する土産になり、いまや全国的に知られる存在にまでなった。それが転落の危機に瀕している。賞味期限を偽った問題が表面化し、実は10年前から続けていたことが明らかになった。 消費者を欺く行為が、このところ相次いでいる。それが明らかになれば、その企業は致命的な打撃を受けるのは、常識だ。だが、その常識を破る行為が次々に発覚するのはなぜなのか。 根底にあるのは、「もうかれば何をしてもいいのだ」という、利益絶対主義だと思われる。そこには、企業の社会的な責任という意識は存在しない。 企業には、利益だけではなく、CSR(企業の社会的責任)が課せられていることを忘れている経営者が多いのだろうか。 「白い恋人」のメーカーは石屋製菓だ。この会社はサッカー、コンサドーレ札幌のスポンサー企業として知られている。チームのために、練習場も用意した。選手たちは、白い恋人のネームが入ったユニフォームを着て、試合をしてきた。 それが絶大なるCM効果を果したのは間違いない。これがCSRに当てはまるかどうかは分からないが、石屋製菓の経営陣は、やはり社会をなめていたと言わざるを得ない。 長期間、人気を維持したことにあぐらをかき、食品を扱う基本的なルールを忘れてしまったようだ。 平家物語の「驕れるもの久しからず」という言葉を思い浮かべた。それは、防衛省事務次官として5年目に入り、小池防衛大臣との間で退任をめぐって確執を続ける守屋氏の場合にも当てはまる。 謙虚さを忘れると、世間から物笑いのタネになることが多いことを2つの事例が示している。(2007.8.16)