小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

133 いつもで続くぬかるみぞ  嘆息の日々

ミートホープ社(北海道苫小牧市)による牛肉偽装事件は、北海道警の強制捜査に発展したが、2001年の雪印食品の牛肉偽装事件を思い出した。北海道の名門企業、雪印乳業の子会社が行った国外産牛肉を国内産と偽った不正工作だったが、雪印食品は解散し、雪印乳業グループは株価の大幅下落や製品の不買運動で経営危機に陥ったのである。

今度のミートホープ社の事件は、これを上回る悪質さがある。不正が連日報道されているが、あきれるばかりである。牛肉ミンチなのに豚肉と他の肉(豚の心臓や舌、羊のクズ肉、鶏肉)を牛肉に混ぜる。さらに別の会社(北海道加ト吉)から賞味期限切れやそれに近い冷凍コロッケを買って、格安でスーパーに卸していたりしたというのだ。まだまだ、不正が出てくる可能性がある。

これでは、スーパーで安いと喜んで買った消費者は浮かばれない。まさか「安かろう、悪かろう」ということわざを思って買った客はいないはずだ。中国産の農産物から高い濃度の農薬が検出されたという報道が昨今相次ぎ、中国産品に対する信用が薄れつつある。では日本の食品(製品)は安全かといえば、今回のような事件が相次ぐと信用ができないというのが率直な感想だ。

2007年も半年が間もなく終わる。その半年の間に企業や会社の不祥事がやりきれないと思うほど表面化した。人間の命にかかわることも少なくない。一体、企業経営者の倫理観、社会に対する責任感はどこへ行ってしまったのか。

バブル崩壊後、日本社会は「失われた10年」という貴重な体験をして、まっとうな生き方を目指して進んでいるはずだった。ところが、それはまやかしで、日本社会の奥底に不正の根はしっかりとはびこっていたのである。

 東京都渋谷区の温泉施設「シエスパ」の爆発事故では女性従業員3人がなくなった。地下から温泉をくみ上げる際には天然ガスも湧出するのに、天然ガスの検知器が設置されず、ガス濃度検査も定期的に行われていなかった。記者会見に現れた女性社長は、「何も知らない」という感じのことを繰り返すばかりで、経営者というより単なる使い走りのようにしか見えなかった。これも、あいた口がふさがらない驚くべき事象だった。亡くなった3人の無念さを思うと、腹が立ってしようがない。

こうした現象は民間だけのことではない。社会保険庁年金記録未記入問題などを見ていると、国や地方自治体の行政の末端にも実は無責任ぶりが浸透してしまっているのではないかと思わざるを得ないのだ。「いつまで続くぬかるみぞ」。いま、嘆息の日々を送っているのは私だけではあるまい。