小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

131 私が住んだ街10・千葉 ロッテとジェフが元気の素

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私が住み始めたころ、この街では、「公害裁判」が続いていた。 京葉工業地帯の一角、千葉港に面して川崎製鉄千葉事業所があった。ここから排出された煤煙によって周辺住民に喘息をはじめとする呼吸器系の病気が頻発した。住民たちは川鉄を相手取って、損害賠償訴訟を起こした。これが「川鉄公害訴訟だ」 京葉線の始発駅の蘇我周辺である。あれから数十年が過ぎ、川鉄は日本鋼管と合併してJFAと名前を変え、千葉の高炉は廃止になり、跡地には大きなショッピングセンターとジェフ千葉の本拠地のサッカー場ができた。公害の街といわれた蘇我駅周辺も、落ち着いた住宅街ができつつある。千葉も変貌したのである。 だが、県庁周辺は昔とあまり変わらない。高層マンションや役所の合同庁舎が建設中だが、人通りは少なく、ここが100万都市の中心かと思うほど、寂しい。 一方で、京葉線幕張海岸駅前に広がる幕張新都心は、超高層ビルが立ち並び、近代的な街に変貌した。東京湾を埋め立てた海抜ゼロメートル地帯には、幕張メッセやオフェイスビルだけでなく、マンションも続々建設されている。同じ千葉市でも県庁周辺と幕張では別の街の印象なのだ。 しかも、千葉市民の元気の源、千葉ロッテの本拠地はこの幕張にある。海岸に面しているので、時折強風が吹く中でプロ野球の試合が行われる。でも、この球場で見る真夏のナイターは気持ちがいい。ビールもどんどんいけるのだ。 県庁を千葉市に置く千葉県は、「へそのない県」という陰口をたたかれている。へそとは、県の中心というべきところで、政令都市のほとんどはその府県の中心になっている。 ところが、どうも千葉市の場合、そうでもないのだ。松戸や柏は千葉に匹敵するほどのにぎわいを持ち、この周辺の住民が千葉市を訪れることはほとんどない。逆に千葉市から松戸や柏に出かける人も多くはいない。ショッピングは自分の住むところのデパートに行くか、東京に出かけてしまうのだ。それは横浜を例外として、東京という日本の首都近くにある都市の宿命なのだろう。 千葉市は東京に通う人々のベッドタウンであるが、都会と田舎が同居したような便利さがあり、心の安らぎも得ることができる街だ。友人の話を聞くと、東京に向かう電車はJRも私鉄もダイヤ編成に気を使うという。 しかし、千葉市と周辺を結ぶ電車は相変わらず古い車両が使われ、朝の電車の込み具合はひどい。JRに冷遇されていることがよくわかるそうだ。 郊外に千葉市動物公園があり、レッサーパンダの「風太君」がいる。彼は千葉市の売り込みにかなり寄与したのではないか。いま千葉市は「幕張メッセ千葉ロッテジェフ千葉風太君の街」なのである。(写真は、県庁付近を走るモノレール)