小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

117 岩手にて ふるさとへの思い

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「ふるさと」の条件は何だろうか。高野辰之作詞、岡野貞一作曲の小学校唱歌の「故郷」の詩はだれでも知っている。 兎追いしかの山 小鮒(こぶな)釣りしかの川 夢は今もめぐりて 忘れがたき故郷 如何(いか)にいます父母 恙(つつが)なしや友がき 雨に風につけても 思い出ずる故郷 こころざしを はたして いつの日にか帰らん 山はあおき故郷 水は清き故郷 この詩に出てくるふるさとの条件に岩手は合っている。岩手は桜の季節だった。しかし、季節外れの雪も4月26日に降った。私のふるさとではないが、岩手を訪れてふるさとに帰ったような穏やかな気持ちを味わった。
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ベトナムから来日した教育関係者らと紫波町を訪問した。ここは盛岡から列車で約20分の町である。人口約3万3600人。コメや果樹、野菜が中心の農業の町だ。 さらに、木材も豊富に伐り出される。町の郊外には、竹下内閣時代の「ふるさと創世」政策で受け取った1億円を資金に建設された温泉付きのホテル「湯楽々」がある。空気が澄んだ夜、露天風呂で見る星は、幻想を誘う美しさだ。付近の登山道入り口には、「熊注意」の標識もあった。つくしも沢山あり、摘み取って持ち帰ることにした。
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この町は、循環型の街づくりを進めていて、町内の2つの小学校は町の材木を使い、町に住む大工さんら建築業者が建設した。そのうちの1校、星山小を訪れた。校舎に一歩入ると、独特の木の香りがする。廊下を歩く。心がいつしか落ち着く。それが木造の温もりなのだ。
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岩手は、宮沢賢治の世界である。会う人たちは、みんな心優しい。紫波中央駅も木造の駅舎だ。心優しい人たちは、ここまで私たちを送ってくれたのである。家に帰り、摘み取ったつくしを食べる。独特の歯ごたえがあっておいしい。訪れた緑豊かな紫波の風景を思い「ああこれが岩手の味なのだ」と実感する。