小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1915 20年後の新聞 紙の媒体は残るのか

IMG_0596.jpg

「20年後も(新聞が)印刷されているとしたら、私には大変な驚きだ」。アメリカの代表的新聞であるニューヨーク・タイムズ(NYT)のマーク・トンプソン最高経営責任者(CEO)の発言を聞いて、驚く人、悲しむ人、当然だという人……さまざまな感想があるだろう。私は思う、というより願いである。新聞は必ず残る、と。でも、それは神のみぞ知るである。  

 トンプソン氏はCNBCテレビ(米国のニュース専門放送局)のインタビューで冒頭のような言葉で、20年後に紙の新聞はなくなることを予測した。報道によると、NYTの契約者数は6月で84万部。コロナ禍によって広告収入が半減したが、デジタル(電子新聞)での契約数は570万になっていて、この4~6月期の売り上げはデジタルの方が紙媒体よりも上回ったという。米国やオーストラリアで地方紙が廃刊に追い込まれたニュースも目にした。新聞業界には今、猛烈な逆風が吹いているのだ。  

 ドイツ出身の金細工師であり、印刷業者だったグーテンベルクが印刷に改良を加え、活版印刷を発明したのは15世紀のことである。活版印刷は紙媒体の発達に多大な貢献をし、新聞の発行部数増、発達にも寄与した。そして、今ライバルとして登場した電子媒体によって、紙媒体は苦戦を強いられ、NYT・CEOのような紙媒体の衰退を予測する人も少なくない。  

 世界ではコロナ禍による広告の激減が新聞経営に大きな打撃を与え、日本の新聞も例外ではないと思われる。日本新聞協会によると、日本の新聞発行部数は2019年が3781万1248部、2012年が4777万7913部だったから7年で約1000万部が減ったことになる。コロナ禍が広告の減少だけでなく部数減にも追い打ちを掛けているのは確実で、新聞はまさに危機的状態にあるといっていい。  

 現代はネット全盛時代で、紙媒体は劣勢に立たされていることは言うまでもない。紙媒体の一方の代表である本の場合、日本に電子書籍が登場して20年以上の歳月が過ぎている。アマゾン・キンドルという端末に代表される電子書籍リーダー(端末)もかなり普及した。しかし、電子書籍が紙の本に取って代わることはなかった。一時期、私も電子書籍で読書しようと、端末を買った。だが、長続きはせず、その端末はほこりをかぶったままになっている。他の人は分からないが、電子書籍は読んでいて目も疲れ、長い時間読んでいることはできない。私にはデジタルよりアナログの紙の方が合っていた。  

 新聞ももちろん、紙媒体派である。できるだけ長く紙の新聞は残ってほしいと思う私は、少数派なのだろうか。新型コロナウイルスに関する情報入手に関する世論調査で、利用するメディアと最も信頼しているものの2つの質問とも新聞がトップだったという記事を読んだ。大学生対象の調査でも情報の信頼度で新聞が一番高いという結果が出ていることを見ても、私は少数派ではないと思いたい。  

関連ブログ↓  1

730 10年で1000万部減の新聞 使命を忘れたら衰退の一途  

1885 新聞離れ助長が心配 検事長と新聞記者の麻雀  1

680 ああ文豪も新聞離れ ゲーテの理想的生き方  17

92 新聞記者とは 映画と本から考える  1794 新聞

と誤報について ハンセン病家族訴訟・政府が控訴断念