小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1752『メロディに咲いた花たち』 人々に愛される四季の花と歌の本

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 花をテーマにした歌は少なくない。四季折々の花を歌ったメロディは心を和ませてくれる。そうした花の歌を集めた『メロディに咲いた花たち』(三和書籍)という本が、このほど出版された。この本には歌の紹介に合わせてさまざまな花の写真も掲載されている。この頁の写真、「アザミ」(本では平仮名)の花は以前の私のブログに載せたものを提供したものだ。それにしても詩(詞)の題材として、多くの花が人々に愛されることをこの本は教えてくれる。  

 この本に出ている花は日本で咲いている90種である。日本ほど四季がはっきりしている国は珍しいといわれるが、四季に合わせ咲く花もバラエティに富んでいる。だれでも、季節の花とその花に合わせた歌を思い浮かべることができるだろう。これらの花の歌のほか、季節を問わず花をテーマにした歌(たとえば、森山良子さんが歌った「この広い野原いっぱい」やSMAPの「世界に一つだけの花」など)を加えた456の歌(ジャンルは童謡、唱歌、民謡、歌謡曲、フォーク、ロック、ニューミュージック、J-POPまで幅広い)が紹介されている。  

 アザミは俳句では春の季語になるが、この本では夏の花の中に織り込まれている。掲載されたのは①「あざみの歌」(詞・横井弘、曲・八洲秀章、1949年)、②「アザミ譲のララバイ」(詞・曲=中島みゆき、1975年)、そして③「少年時代」(詞・曲=井上陽水、1990年)の3曲である。以下のように簡単な紹介もある  ①NHKの番組『ラジオ歌謡』で放送され、後に伊藤久男の歌でレコード化されてヒットトした。信州の八島湿原の情景を歌ったもの。 ②中島みゆきのデビュー・シングル。翌年のファースト・アルバム『私の声が聞こえますか』にも収録。 ③藤子不二雄Ⓐの長編マンガ『少年時代』を基にして制作された東宝映画の主題歌。シングルカットされ、多くのCMにも採用されてミリオンセラーとなった。(以上、同書71頁)  

 立春を過ぎ、梅の花も咲き出した。この本の最初に出てくるのは春の歌で、その冒頭が「梅」に関するメロディであり、「梅は咲いたか」「うぐいす」「湯島の白梅」「真室川音頭」「飛梅」「梅・桃・桜」という6曲の詞が載っている。今日は雪が降っていて現実には冬なのだが、庭のチューリップの芽も顔を出し始めたから確実に春が近づいている。こうした季節の変化を感じながらこの本の頁をめくるのは楽しく、郷愁にかられる。  

 最後に紹介されている歌は、東日本大震災復興支援チャリティーソング「花は咲く」(詞・岩井俊二、曲・菅野よう子)である。NHKでよく聴くメロディだ。あの3・11から間もなく8年。原発事故の福島はじめ、心に傷を負った人たちは少なくない。その傷は、8年の時が流れても癒えない。

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1243 ひっそりと咲く夏アザミ 春から秋までの路傍の花