小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1617 地の下では春の支度が…… 角界は厳寒期

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 きょうまでは「小寒」で、明日20日から「大寒」。1年で最も寒い時期である。天気予報では22日には寒波が来て、大雪が降るかもしれないという。そんな厳寒期でも、花壇ではパンジービオラ水仙クリスマスローズたちが気を吐いている。この季節が過ぎると、光の春が次第に近づいてくるのだ。

 それにしても、昨今話題なのは角界が厳寒期にあることだ。白鵬に続き稀勢の里まで休場し、日馬富士の不祥事による引退騒動が尾を引いているのだ。  

 白鵬は優勝回数40回を記録した文字通りの「大横綱」だが、専門家や横綱審議委員会の指摘のように、大鵬の32回を超えた後あたりから、立ち合いに張り手やかち上げという手段を使うようになった。相撲は格闘技であり、こうした技は禁じ手になっていないから、いいではないかという声もある。

 その一方、横審の委員たちのように「横綱にふさわしくない」という意見もある。今場所、白鵬はその立ち合いをやめた結果、4日目までに2敗をして、5日目から休場してしまった。場所前には、日馬富士貴ノ岩に対する暴行の席に居合わせ、暴力を見過ごしたとして横綱鶴竜とともに減給処分を受けており、立ち会いの武器を封印され、相撲に全力を注ぐという気持ちになれなかったに違いない。  

 稀勢の里の場合は、昨年春場所(大阪)で痛めた左胸付近が完治しないまま出場を繰り返し、途中休場に何度も追い込まれた。今場所も同じ繰り返しで、5日目までに4敗をして5場所連続しての休場(秋場所は全休)に追い込まれた。私は昨年9月、右足の大腿四頭筋断裂というけがをした。現在もリハビリ中だが、まだ完全には回復していない。

 それだけに、けがをしたスポーツ選手には同情を禁じ得ない。幕内最年長の39歳で、左足アキレス腱断裂というけがを克服した安美錦も右膝などを痛めて、6日目から休場した。人気力士、宇良も右ひざ前十字靱帯断裂という大けがには勝てず、来場所は幕下に陥落する。一方、横綱の場合、休場しても降格はないから、5場所連続休場という稀勢の里は引退の瀬戸際に追い込まれたといえるだろう。それが相撲という伝統スポーツの非情な現実なのである。  

 旧暦の七十二候によれば、大寒の初候は「款冬華さく」(ふきのとうはなさく)である。地上は凍てついていても、地の下では春の支度が始まっているのだ。けがで休んだ力士たちが迎える春場所。彼らはけがを克服し、花を咲かせることができるだろうか……。これまで、大相撲に関して何本かのブログを書いてきた。そのブログの通りには行かないのがこの世界のようだ。昨今の角界を見ていてそう思う。

 写真はクリスマス・ローズの花

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