小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1284 hana物語(26) つぶやき3

画像「寂しさのあまり hanaのつぶやき」

 このところ、昼間私はいつも孤独です。この家で一番私の面倒をみてくれるママの姿が見えないからです。一軒家で留守番をするのは、ママが習い事に出かける週1回だけでした。それなのに、今週はママの姿はずうっと見かけません。夜になると、仕事を終えて帰ってくる私の妹分のちーちゃんもいないのです。さびしくて、さびしくてたまりません。

 週の初めの朝早く、2人は「お父」の車で出かけていきました。私は開いていた玄関から飛び出し、車に乗ろうとしましたが、「お父」に抱き上げられて家に戻されてしまいました。それから、2人はいないのです。

「お父」は間もなく戻ってきましたから、2人はどこかに旅行に行ったのでしょう。 その日から、私は毎日留守番です。朝早く太陽が出ない前に起こされ、「お父」と暗いうちからお散歩に行きます。家に帰ると、もう1人いるおねえちゃんのみーちゃんは仕事に行ってしまいます。

「お父」も最近は仕事を再開したようで、みーちゃんの後から出かけて行き、8時半から私は一人ぼっちなのです。 3日間はさびしさを我慢しました。でも4日目もう我慢ができなくなってしまいました。夕方、吐き気を催し、ちょっとだけ吐いてしまいました。するとお腹の調子までおかしくなりました。我慢しましたが、だめでした。

 リビングのカーテンを何とか開けて外に出られないかどうか見てみましたが、窓にはもちろん鍵がかかっています。我慢の限界でした。窓際のカーペットに粗相をしてしまいました。こんなことは初めての経験でした。

 そこに、みーちゃんが帰ってきたのです。みーちゃんはこの家で私の姉のような存在で、いつもかわいがってくれます。この日も、いつもの通りただいまのチューをしながらなでてくれていたのですが、途中から「うんち臭い!」と言い出し、部屋の中を探し回り出したのです。その後のことはご想像におまかせします。

 夜遅くに帰ってきた「お父」は大笑いしながら「ママがいないストレスだな~」なんて、のん気なことを言っていました。みーちゃんには悪いことをしてしまいました。みーちゃんは「月曜日はママたちが帰ってくるから、もう少し辛抱してね」と言います。そんな訳で留守番ももうすぐ終わりです。

 そうそう、言い忘れていましたが、実は粗相をする前の夜にキッチンに入りこんで白菜を盗み食いしてしまったのです。半分くらい食べて2階から降りてきたおとうさんに見つかってしまったのですが……。 それがよくなかったのかな。でも、白菜をまるかじりするのは幸せです。キッチンにそれがあったので、ついつい食べてしまったのです。「お父」は「無農薬の白菜を買ったから体にいいはずだよ」と言っていました。それなのに私はどうしたことでしょう。つまみ食いの罰が当たったのでしょうか。

 粗相のことをみーちゃんからのメールで知って、ママは「お父」と同じく大笑いしていたそうです。いやだなあ、帰ってきたらからかわれるかな。でも、ママは優しいので、たぶん私の頭をなでて、そのあと黙って抱きしめてくれるはずです。そう思います。(2007・1。hanaのつぶやき) 27回目へ