小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1291 hana物語(33) つぶやき10

画像 「犬の事故の話 私の日記から(第1章と重複しますが、当時の心境はこんな感じでした)」

 わが家の犬が爪楊枝を飲み込んで大騒ぎをしたことは、hanaの独り言の通りだ。実は、こうした犬にまつわる「事故」はそう珍しいことではないようだ。わが家の話を聞いた家族の友人(Aさん)が、こんなことがあったと連絡してきた。それは感動的であり、そして不思議なストーリーだった。

 Aさんの家でのことである。ある日、Aさんの妻が祖父母のためにと買ってきた約10センチの串に刺さっただんご2本をだれも知らないうちに犬(ラブラドールレトリーバー)が食べてしまった。だんごがないことに気付いたAさん家族は慌てて近所の動物病院に駆け込み、お医者さんに開腹手術をしてもらった。だが、串は発見できず、お医者さんは「本当に食べたのかなあ」と疑う始末だったという。

 串が見つからなかったため手術代はおまけしてくれたが、腹を切られた犬はそのまま病院に入院した。退院後も首にカラーを巻いて不自由な生活が続いた。その後、3週間がたった。Aさんの祖父が急死した。自宅から出棺したあと、急に犬がはしゃぎ出し、せき込んだ。その直後、何と犬の口から串2本が出てきたのだ。

 食道か胃の周辺に残っていたのかもしれないが、開腹した際はうまく見つからなかったのだ。Aさんが行った動物病院では内視鏡がなかったため、緊急事態だとして手術をしたという。 Aさんは、内視鏡のある病院ならばもっと早く見つけることができたはずと反省するとともに「亡き祖父が吐き出させてくれたのではないか」と、家族みんなで故人に感謝し、涙を流したそうだ。

 犬や猫など、ペットを飼う家庭が多い。そして、ペットはその家の一員として大事にされている。しかもペットは食べることが命の次に大事なことだ。飼い主が注意をしないと、何でも食べたいと思うわが家やAさんの家のように「事故」が起きてしまう。それは、ペットにとって迷惑なことであり、飼い主側に大きな責任があるといえる。

 わが家の犬のhanaは、痛い注射を打たれて悶えたのを忘れ、普通の日常に戻り、気ままな生活を送っている。日中も涼しいために気分もいいのか、私が帰宅すると、声を出して絡まってくる。これまでは寝そべっていて気付かないふりをしていた時もあるので、かなりの変わりようだ。今夜は別の犬が遊びに来て、2匹は家中を走り回って大騒ぎをしている。(2009・9)

「散歩の話 私の日記から」

 早朝6時過ぎ、まだ暗い中、家を出る。西高東低の冬型の天気らしく風が冷たく、寒さが身にしみる。hanaはねぼけまなこからようやく覚めたらしく、しきりに道端に残された他の犬たちのにおいをかいでいる。毎日繰り返す朝の散歩光景である。寒さでけさは鼻水が出るほどで、明るくなると遠くに雪を抱いた富士山も見えてきた。

 連れのhanaは飼い主に似たのか、わがままなところがあり、いつもと違うコースに行こうとすると、足を踏ん張って拒否しようとする。 散歩も毎日やっていると、同じコースを歩くのはあきてくる。ヨーロッパのような石畳の美しい街並みを歩くのなら楽しいだろうが、街路樹の葉も落ちた冬枯れの日本の、しかも新興住宅街は平凡で楽しみも少ない。

 そこで新しい発見を求めて、最近はほぼ毎日コースを変えている。 夕方、hanaの散歩を担当する家人は、いつも同じ道を歩いているので、hanaも逆らうことなく歩くという。犬にも道を覚えるくらいの学習能力はある。あるいは、習慣で身についたのだろう。だが、朝は違う。毎日のように歩く道が変わってしまうと戸惑いがあるのかもしれない。

 つい、足を止めて「私の行く方角はこちらではない」というように、難しい顔をするのだ。それを引っ張りながら、なだめすかすのが日課になった。 寒い朝でも、白い息を吐きながら歩き出して1時間近くになると、体もあたたまってくる。その頃になると、もう家も近い。

 それを感じたハナは、道端のにおいに気を取られていたのに、それをやめ早足になる。一刻も早く家に帰り、えさにありつきたいと思うのだろう。この時点で彼女はもう素直さを取り戻している。 彼女の気難しい面はもう一つある。たまに前日飲みすぎたり、あるいは体調が悪かったりして、私が散歩に行くのをやめ、代わりに家族が連れ出すことがある。

 すると勝手が違うのか、用をたすと、早々に家に帰ろうとする。力はけっこう強く、女性ではコントロールができない。その結果、家族はやむなくそのまま帰ってくることが多い。 そんなhanaは、遊ぶのが大好きだ。夜になると私と彼女はひと遊びするのが習慣になっている。私の帰宅を待ちかまえ、彼女は体を低くして、足を前に伸ばしてさあ「やるぞ」という格好をする。

 足に触り、顔を撫でてやると低いうなり声をあげて戦闘開始となる。 口を半分開け、尻尾を振りながら、逃げたり、寄ってきたりで忙しい。手を口に入れると、噛むふりをするが、絶対に噛んだりはしない。ソファーに上がって、隙間に顔を突っ込み隠れたとばかりの姿勢もとる。そんな遊びを5、6分やると、満足したのか大人しくなる。

 hanaは7歳になった。人間でいえば44歳から54歳の間らしい。ある計算式によると、ハナのような大型犬については、最初の1年で12歳、それからは1年で7歳ずつ歳をとるという。hanaに当てはめると12+(犬年齢7―11)×7=54となる。人間の換算年齢では、hanaはもう54歳なのかもしれない。そう考えると、さらに大事にしたいと思うこのごろだ。(2009・12)

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