小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1229 雪に負けず育つオリーブ 新潟で障害者の自立を支援

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 新潟は豪雪地帯である。その新潟でオリーブ栽培に取り組んでいる知人がいる。障害者の自立支援のNPO「ひなたの杜」を運営する橋元雄二さんだ。新潟市内の耕作放棄地を借りてオリーブを植え、障害者とともに育てているオリーブは順調に育ち、昨年から実をつけ始めた。

 橋元さんは元写真家だ。橋元さんは2005年に障害者自立支援法が制定され、障害者の自立が叫ばれている中、障害者の労賃が低く、経済的自立の道が険しいことに頭を悩ませた。そのため新潟農業大学校シニア学科の果樹部門で学び、研究の末新潟でもオリーブ栽培が可能ではないかと考える。

 繰り返すが、新潟は豪雪地帯であり、冬の寒さは厳しい。この新潟でも栽培ができるかどうかという質問に農業研究者は一様に「分からない」と答えたという。 様々な文献を調べた橋元さんは、かんきつ類が育つ環境ならオリーブも栽培できるという確信を抱く。そして、2009年、新潟市内の耕作放棄地約2000坪に200本のオリーブを植え、以降も毎年苗木を植え続けた。

 その過程で、九州でオリーブの普及活動をしている人たちとも知り合い、九州からの100本の寄贈もあって新潟の地にオリーブ畑が出現したのである。 2012年8月、福岡でオリーブ栽培と障害者の自立支援のための講演会が開かれた際、橋元さんが講師になった。その話を私も聞いた。この講演で橋元さんは以下のように話した。

 地球温暖化の影響か、新潟の佐渡でも温州ミカンの栽培ができるようになった。日本海側は夏の間、太平洋側より日照時間が長く、オリーブの育ちにもあまり影響がない。幼木時期の冬場対策も経験して新潟でもオリーブの栽培が可能と証明できた。他の果樹に比べ年間の労力は5分の1で済む。障害者の仕事のスピードは健常者に比べ格段に落ちるが、オリーブ栽培なら知的、身体的ハンディがあっても就労の道が広がる。ひ弱で力仕事ができなかった自閉症の子どもが、いまでは水やりのプロとして頑張っている。

 オリーブ栽培の輪は、橋元さんの取り組みで障害者の自立支援にも広がりつつあるのだ。