小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1159 墓参の道の吾亦紅(われもこう) 赤いろうそくの意味は

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 先日のお彼岸、郷里で法事があった。父の70回忌、祖母の37回忌、母の27回忌を合同でやった。父だけが70回忌というのは太平洋戦争に召集され、1945年4月に戦死したからだ。墓参りをする前に、家の中の仏壇の前で浄土真宗の住職が経をあげた。仏壇には赤いろうそくが灯された。経が終わると、住職が赤いろうそくの意味など、浄土真宗の特徴を話してくれた。

 住職は兄の同級生で、私の実家などが檀家になっている寺の長男として生まれた。定年まで学校の教師を務め、定年後の60歳になってから仏教関係の大学に入り直して、住職の資格を得た人だ。

 元教師だけあって、説明は分かりやすかった。赤いろうそくは、50回忌以上の場合に灯すもので、長い年月が経ても遺族が故人を思う気持ちを抱き続けていること、遺族が元気であることを示すもので、おめでたいという意味があるのだそうだ。

 仏壇には3人の位牌もあるが、住職によると、これは「掛け軸」にするのが本来の姿だという。線香をあげる(一本を半分に折ってろうそくで火をつける)時にたたく鏧(キン、鈴とも呼ぶ)は、ふだんは打つ必要がないが、打つとすれば、打った後に手を合わせてくださいと話した。卒塔婆も不要なのだが、住職は経の一部と3人の戒名を書いた卒塔婆を持ってきた。

「墓参りだけでは、同じ墓所を持つ人たちに、あの家で回忌の法事をやったということが分からないので、その証明の代わりに持ってきました」と、住職は説明した。 俳句をたしなむ姉は「父母の回忌の道に吾亦紅」という句を披露した。

 両親の回忌の法事で墓参りに行く道の側に吾亦紅の花が咲いているという意味だ。吾亦紅の花は、15夜のお月見にススキと一緒にわが家でも飾った。以前はどこにでもあったが、最近はあまり見かけなくなり、月見用の花もわざわざ花屋で買ってきたものだった。秋の季語らしく、小林一茶の「吾亦紅さし出て花のつもりかな」と、高浜虚子の「吾も亦(また)紅(くれない)なりとひそやかに」の2句がよく知られているという。

 この姉が高校在学中、校長をしていたのが現在存命中の日本人男性の最高齢者である百井盛(ももい さかり)さん(110歳)だった。百井さんは、東日本大震災原発事故の影響を受けた福島県南相馬市出身で、福島県や埼玉県で教員生活を送った。

 現在は東京都内の療養型の病院で生活をしている。現在79歳の姉は、百井さんの記事のコピーをみんなに渡して「この人が高校の時の校長先生だった」と話した。百井さんより6歳下の父が死んだのは36歳の時で、百井さんの3分の1という短い人生だった。

 写真 取り入れ前の稲穂が台風で倒れていた