小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

990 WBC野球不参加とオスプレイ たかがスポーツというなかれ

画像

 アメリカとの関係を象徴する2つの出来事があった。野球と政治の話である。ひとつは来年予定されているWBC野球に対し、日本のプロ野球選手会が不参加を決めたというニュースだ。 もうひとつは、事故が相次ぎ、配備に反対の声が高まっている米軍の軍用機・オスプレイが23日に岩国基地に配備されると発表になったことだ。

 米大リーグに反旗を翻した野球選手たち、一方は米側の言いなりの政府。私は野球選手たちに拍手を送る。 選手会がWBC不参加を発表―というニュースを聞いて、なぜと思った。主催国のアメリカはこの大会にはあまり力を入れず、日本は運よく2連覇を達成した。3回目は来年3月に開催される予定で、日本の3連覇の期待も大きかった。選手会不参加表明の背景を聞いて、もっともだと思った。

 大会の収益の66%が大リーグに入り、日本にはわずか13%しか配分されないというのだ。大リーグ側はこの配分の比率は明らかにせず、収益の多くを選手の保険費用や野球後進国への支援費用に使うので、問題ないと答えているそうだ。 日本の選手会会長の阪神新井貴浩選手は「これからの世代を考えた場合、苦渋の決断をせざるをえなかった。

 1年前から主催者側に収益の配分の変更のなど大会運営の改善について要望を出していたが、返答がなかった」と話した。当然だと思う。この大会にあまり力を入れないアメリカが大部分の利益を取るのだから、ほかの国の選手たちはまるでピエロである。日本の選手会の決定は勇気ある。

 外務省OBの加藤良三日本野球コミッショナーの「ファンがンが楽しみにしているのだから、金を度外視して参加すべきだ」という話は、説得力がない。対米追従の外交しかやってこなかった元外務官僚らしいといったら、失礼だろうか。 一方で、オスプレイ配備問題の政府の対応にはあきれてしまう。

 日米安保条約では軍用機の配備に、日本側が口を挟む余地はないのかもしれない。だが、それはあくまでも原則である。オスプレイのように、事故が多発している機種は別だ。それに対し野田首相も、森本防衛相も受け身の姿勢を変えようとしない。「当初から説明している通りに進めたい」(森本防衛相)、「地元にしっかりと説明を続けたい」(野田首相)―という話を他人事のように繰り返している。

 野球選手会を少しは見習ったらいい。 政治家は「たかが野球と政治・外交を比較しないでくれ」というかもしれない。そうだろうか。やはり、理不尽なこと(ここでは国民の安全が保障されていない)があれば、政府は盾になり、あるいは壁になることが必要ではないか。いまの野田政権にはそうした気概は見られない。

 アメリカ側は日本へのオスプレイ配備について、抑止力(中国と北朝鮮が対象か)の維持のためと説明している。アメリカの「世界の警察官意識」は依然健在のようだ。 写真は、四国の大歩危。政界の大ボケぶりに疲れる日々だ。