小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

329 中欧の旅(3) フェルメールも見た・ドレスデン国立絵画館にて

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 悔しいと思った。素晴らしい作品がこんなにあるのに時間がない。それと、美術作品に対する知識が少ない。目の前に次々と出現する名画を見ながら私は戸惑った。

 いま、話題のフェルメールだけでなく、レンブラントラファエロ、エル・グリコらの作品を展示するドレスデンの「国立絵画館・古典巨匠絵画館」(アルテ・マイスター)を訪れたときの正直な思いだ。 ドレスデンは、ドイツの首都、ベルリンから車で約2時間の「エルベの真珠」といわれる美しい街だ。

 ドレスデン城のアウグスト通りに面した馬小屋(巨大な)の壁には、歴代君主の馬上行進図・フェルステンツーク(君主の行進)がある。壮大である。人間の限界を超える力を感じる。 さて、アルテ・マイスターである。おびただしい絵をここまでよく集めたものだと思う。教科書で見た作品もあった。

バベルの塔」はここにもあった。オランダの多くの作家が好んで描いたそうで、一番有名なのはブリューゲルの作品(ウィーン美術館)だが、ファルケンボッホのバベルの塔もいい。 でも、フェルメールの「窓辺で手紙を読む少女」の方が足を止める時間が長かった。さらに、リオタールの「チョコレートの少女」は、やはりよかった。ガイドさんが「一番好き」というように、ドイツの人々には、この清楚な作品は人気が高いのだそうだ。

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 時間が限られた中で、多くの絵画を見るのは残酷だと思う。好きな絵に出会った時はそこに足止めされてしまう。それなのに、贅沢は許されない。少しでも多くの絵を見ようと足を動かし続けると、実は後で何の絵も覚えていなかったりするのだ。でも、今回は大丈夫だった。絵の鑑賞について、難しいことは分からない。

 だが、基本は一つ、絵の前にして画家の思い、心が伝わる作品こそ私は好きだ。宗教に無縁な私には、キリストをテーマにした作品は難解である。だが、これらの絵は西洋美術を理解する上で重要な位置を占めている。宗教画の鑑賞も避けてはならないと思うのだ。