小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

96 おはぎを食べる hanaも一口

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 春の彼岸の中日。「おはぎ」を食べた人は少なくないはずだ。和菓子屋の店先でおはぎを買い求める姿も目についた。飼い犬のhanaも口に入れた。 辞書をひもとく。小豆の粒が萩の花の咲き乱れるさまに似ていることから、萩の餅といわれ、それがいつしかおはぎと呼ばれるようになったという。

 おはぎは「ぼたもち」ともいわれる。季節に合わせて、春から夏までにつくるものをぼたもち、秋につくるものをおはぎとする説もある。 あんをつけたものをぼたもち、黄な粉をまぶしたものをおはぎ、こしあんのものをぼたもち、つぶあんをおはぎとする説もある。おはぎもぼたもちも地方によって言い方が違うが、いずれにしてもおはぎもぼたもちも同じものと言っていい。 赤い色が邪気を祓うことから、昔から春、秋の彼岸や49日の法要におはぎを食べる習慣があるのだという。

 わが家も彼岸やお祝い事があると、妻手作りのおはぎを食べる。こしあん、黄な粉、ごまの3つの種類があり、黄な粉とごまには中にあんこが入っている。 家族で食べ、妻の父や私の両親の写真を和室の床の間に飾り、おはぎを供える。外出から一緒に帰ったhanaは、すきを見て和室に入り込んだ。嗅覚の鋭い犬族である。おはぎを発見し、まず黄な粉の方をぺろりと一口で食べた。(見ていないので、想像だ)。

 さらにアンこの方をなめ始めたところで妻が気づき、和室に飛び込み取り上げる。残念そうなhana。 甘いものでも辛いものでも、塩からいものでも何でも食べるわれわれ人間だが、犬族にはそうした人間の食べ物はよくないはずだ。だが、夕食時にこの話をすると、冷静な娘は「残りも食べさせたら」と平然と言う。 hanaにとっては、素晴らしい話だ。ではと、私はいつものドッグフード(粒状と缶詰の2種類)におはぎの残りを混ぜてやったのだ。

 うれしそうなhanaは、食べ終えると容器の周辺をかぎまわっている。いつもとは違う味にもう少しほしいと思ったに違いない。 初めてのおはぎの味が忘れられなかったのか、彼女は寝入っても時々もぐもぐと口を動かしていた。(07・03・21)