小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

スポーツ

1859 雷電が伝えたかったこと 猛稽古に込めた闘う姿勢

凶作と飢餓、貧困に悪政が追い討ちをかけた天明・寛政年間(江戸時代)、相撲界にヒーローが現れた。古今無双の強さを誇った雷電為右衛門である。8日から始まった大相撲春場所(大阪)は無観客開催という異例の場所になった。テレビで歓声のない静寂な相撲…

1852 ヒーロー日替わり時代 幕尻力士優勝の珍事

NHKがテレビとラジオで生中継するスポーツは、現在では大相撲くらいしかない。それほど大相撲は国民的人気スポーツの位置を占め続けているのかどうか、私にはよく分からない。大相撲初場所で幕内番付の一番下位である前頭西17枚目(いわゆる幕尻)の徳…

1832 季節は秋から冬へ ラガーの勝ち歌みじかけれ

散歩コースの遊歩道から調整池を見ていると、このところ毎日のように霧が出ていて、美しい風景を演出している。今朝も昨日に続き霧が出ていた。茜色に染まった雲と紅葉が始まった森、赤いとんがり屋根の小学校、その下に薄く広がる白い波のような霧が見事な…

1831 日本メディアとイングランドチームに喝 ラグビーW杯余聞

日本開催で盛り上がったラグビーのワールドカップ(W杯)。2日に横浜国際総合競技場で行われた決勝で南アフリカがイングランドを32-12で下し、3大会ぶり3度目の優勝を飾った。その表彰式でイングランドチームが取った行動に批判が集まっている。海…

1826 ラグビーは小説 サッカーはノンフィクションという比喩

「たとえていうなら、小説はラグビーで、ノンフィクションはサッカーということになろうか」新聞記者出身の故ノンフィクション作家、本田靖晴は『複眼で見よ』(河出文庫)というジャーナリズム・メディア論をテーマにした本の中で、小説とノンフィクション…

1822 400勝達成の裏で 金田に贈る川上の言葉

プロ野球で大選手(大打者)にして大監督といえば、川上哲治と野村克也の2人だろう。6日に86歳で亡くなった金田正一は、前人未到といわれる400勝を達成し日本では最高の投手といえる。ロッテを率い日本一も経験したが、監督の力量としては川上と野村…

1820 繰り返すドーハの悲劇 過酷!深夜の世界陸上

「ドーハの悲劇」は、1993年10月28日、中東カタールの首都ドーハで開催されたサッカーW杯アジア地区最終予選最終節の試合で、イラク代表と戦っていた日本代表がロスタイムに同点ゴールを入れられ、W杯初出場を逃したことを指す言葉である。現在、同…

1800 酷使か登板回避か 大船渡監督が問う高校野球の在り方

野球の好きな人なら、権藤博という投手のことを覚えているだろう。プロ野球、中日に入団した権藤は新人の年〈1961年〉に公式戦の半分以上に及ぶ69試合に投げ、35勝19敗(うち先発41試合、完投2、投球回数429回3分の1)という現代では考え…

1787 愉快な戦争はほかにないと子規 激しい日本語の野球用語

「実際の戦争は危険多くして損失夥し ベース、ボール程愉快にてみちたる戦争は他になかるべし」。正岡子規は元気だった学生時代のころ野球に熱中し、随筆「筆まかせ」に、こんなふうに記した。子規が愉快な戦争と書いた野球だが、日本語の野球用語には解説者…

1782 絶対ではない人間の目 相次ぐ誤審の落とし穴

ゴルフのように審判がいない競技もあるが、スポーツ界で審判は重要な役割を持っている。審判の判断に勝敗の行方が大きくかかわることが多く、「誤審」が話題になることも少なくない。人間の目は確かなようで間違いもあるため、最近はビデオ判定も珍しくない…

1766 体は小さくても  貴景勝の可能性

大相撲の貴景勝が大関に昇進することが決まった。平均身長184センチ、同体重164キロと大型化した大相撲の世界で、体重こそ170キロと平均を上回るものの、身長は175センチと決して大きくはない。スポーツは体の大小だけではないことを貴景勝の活…

1764 日米で特別な存在に イチローの引退

大リーグ・マリナーズのイチロー外野手(45)が東京ドームの開幕2戦目後、現役引退を表明した。13年目に入ったこのブログでイチローをこれまで6回取り上げている。それだけ、イチローは気になる存在だったといえる。人生には「特別な一瞬」があるが、…

1754 若者の未来奪った五輪の重圧 円谷幸吉の自死から51年

東京五輪のマラソンで銅メダルを獲得した円谷幸吉が自殺をしたのは1968(昭和43)年1月9日のことである。27年の短い生涯だった。あれから51年の歳月が流れている。円谷の自殺に関しては当時から、次のメキシコ五輪で金メダルをという重圧を受け…

1753 天に通じる肉親の言葉 池江選手の白血病公表

「人事を尽くして天命を待つ」というよく知られた言葉がある。「人としてできる限りのことをして、その結果は天の意思に任せるということ」(大修館書店・明鏡国語辞典)という意味だ。中国南宋時代の政治家で儒学者、胡寅(こいん)が記した『読史管見』に…

1747 苦しい経験を生きる糧に 引退の稀勢の里へ

大相撲の横綱稀勢の里が引退した。横綱在位12場所、15日間を皆勤したのはわずか2場所という短命な横綱だった。記録面から見ると、不本意な力士生活の頂点だったといえる。だが、なぜか気になる存在だった。それは相撲ファンに共通する見方だったかもし…

1724 59歳まで投げ抜いた伝説の投手 その名はサチェル・ペイジ

日本ハムから大リーグ(MLB)のエンゼルスに移籍し、投手と打者の「二刀流」で活躍した大谷翔平の新人王受賞が決まった。何よりのことである。大谷と比較されるのは、大リーグ史上最もよく知られているベーブルースだろう。ルースは、二刀流から出発し、…

1719 痛ましい駅伝選手 這ってでものタスキリレー

10月21日に開催された全日本実業団対抗女子駅伝の予選会で、中継地点目前で倒れた岩谷産業の2区、飯田怜が約200~300メートルを這いながら進んだ。飯田は右足を骨折し、両ひざからは血が流れていた。繰り返しこのシーンがテレビで放映されている…

1704 大谷の二刀流復活記念日は? けがとの闘い1年を振り返る

俵万智の歌集『サラダ記念日』(河出書房)が280万部というベストセラーになったのは、31年前の1987年のことだった。歌集には題名となった「『この味がいいね』と君が言ったから七月六日はサラダ記念日」の短歌が収められていて、「記念日」という…

1699 できるのかパラリンピック 障害者雇用水増しの国なのに

かつて、職場の同僚に半身が不自由な同僚がいた。彼女は自由な方の手でパソコンを打ち、きっちりと仕事をこなしていた。誠実でまじめだから同僚たちから信頼されていた。障害者雇用で採用された一人だった。障害者雇用の義務がある国の行政機関の多くで雇用…

1697 社会現象になった金足農 「ベースボールの今日も暮れけり」

「刀折れ矢尽きる」あるいは「弓折れ矢尽きる」というのだろうか。甲子園の夏の高校野球決勝、大阪桐蔭―金足農戦(12-3で大阪桐蔭が優勝。春夏連覇の2回という新記録を達成)をテレビで見ていて、この故事を思い浮かべた。「戦う手段が完全になくなる。物事…

1693 高校野球美談の陰で 猛暑が及ぼす甲子園記念大会への影響

異常な暑さの中で甲子園の夏の高校野球大会が続いている。熱中症で足がけいれんした左翼手に相手校の3塁コーチの選手が駆け寄り、冷却スプレーで冷やしてやった、というニュースが美談として報じられている。これだけでなく、今大会は暑さのために毎日のよ…

1688 観測史上最高の「激暑」 心配な東京五輪

近所の自治会の掲示板に、夏休みの子どもたちの「ラジオ体操」や「そうめん流し大会」中止の案内が出ていた。長引く猛暑の影響だ。散歩をしていると干からびたミミズの多くの死骸が目に付き、街路樹からはうるさいほどのセミの鳴き声が聞こえる。大暑の23…

1687 孤軍奮闘の御嶽海 甘えの横綱たち

3人の横綱だけでなく、新大関の栃ノ心までけがで休場した大相撲名古屋場所。14日目で関脇御嶽海が初優勝を決めた。それに対し残った大関2人は元気がなく、ようやくカド番を脱した。それでも人気があるから、相撲協会は危機感を持っていないのかもしれな…

1671 サッカーの祭典と子規  苦しみは仁王の足の如し

サッカーW杯ロシア大会が始まった。テレビニュースを見て、なぜかワクワク感があることに気づいた。それは同じように4年に1回開催されるオリンピック(夏、冬2年の間隔)の開幕とほぼ似た感覚だ。これは私だけでなく、スポーツを愛好する多くの人に共通…

1669 大谷と職業病 スポーツ選手のけがとの闘い(3)

野球の投手にとって肘の損傷は「職業病」といっていい。これまで多くの投手がこのけがに苦しみ、野球人生を途中で断念した投手も少なくない。大リーグに行き、エンゼルスで投打の二刀流に挑んでいる大谷翔平(23)が右肘の内側副靱帯(じんたい)を損傷し…

1650 人を動かす言葉 鉄人衣笠さんと政治家

2215試合というプロ野球の連続試合出場記録を持ち、国民栄誉賞を受賞した元広島カープの衣笠祥雄さんが亡くなった。71歳だった。「鉄人」といわれた衣笠さんは17シーズン、全試合に出続けた。長い年月だ。その間、欠場の危機を乗り越えたのは優れた…

1645 走ることの意味 わずか150メートルでも

遊歩道を歩いていると、走っている人が目につく。もちろん、私のように散歩をしている人の方が多いのだが、足取りも軽く走っている人を見ると、つい私も走りたくなる。だが、そうは行かない。右足の故障が完全には回復していないから、無理はできない。それ…

1630 続・けがとの闘い 五輪選手のスポーツ人生

「今度のオリンピックに人生をかけた」。平昌冬季五輪男子フィギュアスケート金メダルの羽生結弦のこの言葉を聞いて、スポーツ選手のオリンピックに対する意気込みの強さを感じたのは、私だけではないだろう。羽生は、けがの回復が順調ではなく、痛み止めの…

1628 五輪を巡る友情物語  誇張されたストーリー

スポーツ大会の頂点ともいえるのがオリンピックだ。出場した選手たちは互いに技を競い、優劣を争う。それがメダルへとつながる。だから、選手にとって戦う相手はライバル(競争相手や好敵手)だ。韓国の平昌冬季五輪で金メダルを獲得した2人の日本人選手に…

1627 銀メダリストの光と影 2人の名選手を思う

第23回平昌冬季五輪で、これを書いている16日午前現在、日本選手はこれまで金メダルは獲得していない。しかし銀4、銅3という活躍を見せている。スキー複合ノーマルヒルの渡部暁斗とスノーボード男子ハーフパイプの平野歩夢は2大会連続して銀メダルを獲得…