小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

政治

1677 恩讐のかなたに 明治維新と会津

ことしは明治維新から150年になるという。明治維新については様々なとらえ方があるが、日本社会が武家中心の封建国家から近代国家へと大きく転回したことは間違ない。その裏で薩摩、長州藩を中心にした新政府軍(官軍)と戦った旧幕府軍は賊軍といわれ、…

1674 辞書を引く楽しみ 「問うに落ちず語るに落ちる」

最近、辞書を引くことが多い。分厚い辞書だけでなく電子辞書には出版社別のいろいろな辞書が入っていて、気になる言葉を簡単に調べることができる。例えば「語るに落ちる」という言葉がある。政治家の言動を見ていると、昨今これに当てはまることが少なくな…

1666 正義の話について  膨らむ疑問

昨今、「正義」という言葉を考えることが多い。森友学園問題で大阪地検特捜部は国有地の8億円もの大幅値引き売却に対する背任や決裁文書を改ざんした虚偽有印公文書作成など全ての告発容疑について、佐川宣寿前国税庁長官など財務省幹部ら38人全員を不起…

1650 人を動かす言葉 鉄人衣笠さんと政治家

2215試合というプロ野球の連続試合出場記録を持ち、国民栄誉賞を受賞した元広島カープの衣笠祥雄さんが亡くなった。71歳だった。「鉄人」といわれた衣笠さんは17シーズン、全試合に出続けた。長い年月だ。その間、欠場の危機を乗り越えたのは優れた…

1643 言葉を武器にした政治家 映画『ウィンストン・チャーチル』を見る

「戦争には決断。敗北には闘魂。勝利には寛仁。平和には善意」(『第二次大戦回顧録』より)第二次大戦下、イギリスの首相としてナチスドイツ、日本と戦い、連合国を勝利に導いたチャーチルは、この長文の回顧録によって1953年、ノーベル文学賞を受賞し…

1632 常識について思うこと 政治に必要なのはモラルと思想

改定された第7版の広辞苑(岩波書店)で「常識」という言葉を引くと、「普通、一般人が持ち、また、持っているべき知識。専門的知識でない、一般的知識とともに、理解力・判断力・思慮分別などをふくむ」という解説に加え「森鴎外、自彊不息「――は普通の事理を…

1614「焼き場に立つ」少年の写真 ローマ法王「戦争の結果」

カトリックのローマ法王庁がフランシスコ法王の指示で、教会関係者に対し、1945年に原爆投下直後の長崎で撮影された少年の写真入りカードを配布したという記事が今日の新聞各紙に掲載された。「これが戦争の結果」(あるいは結末)などという見出しだっ…

1603 孤立する元中国残留孤児 2世も定年世代に

中国残留孤児が社会問題としてクローズアップされたのは、1980年代だった。1981年3月2日、中国残留孤児の訪日肉親調査がスタートし、1999年まで30回にわたって集団訪日調査が続いた。その結果、孤児とその家族の多くが帰国を果たしたのだが…

1587 9月に吹く風 変わらぬ人間性

物いへば唇寒し秋の風 松尾芭蕉 今日から9月。急に涼しくなった。秋風が吹き、街路樹のトチノキの実が落ち始めた。詩人の大岡信は、日本人の秋風に対する思いについて、面白いことを書いている。最近、ニュースになった政治家のヒトラーに関する発言を考え…

1583 ガダルカナル・インパールを生き抜く 元兵士の手記

72回目の終戦の日である。太平洋戦争で310万といわれる日本人が死亡し、中国(1000万人)をはじめアジア各国で2000万人以上が犠牲になったといわれる。天皇陛下は戦没者追悼式で「ここに過去を顧み、深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び…

1578 「長い物には巻かれよ」 守った人と守らなかった人

「長い物には巻かれよ」という言葉は「目上の人や勢力のある人には争うより従っている方が得である」(広辞苑)という意味だ。官僚の世界で、この言葉を守った人と守らなかった人の2つの例が日本と韓国で最近話題になった。どちらが多くの人に受け入れられ…

1558 苦闘する学芸員たち 政治家の発言にひるむことなかれ

これまで全国のさまざまな博物館や美術館を回り、学芸員から話を聞いた。彼ら、彼女らはいかにして、自分や同僚たちが企画した展覧会に多くの入場者を呼ぶか奮闘していた。そんな人たちに対し、山本幸三地方創生相が外国人観光客らへの文化財などの説明、案…

1552 手負い稀勢の里の優勝  底知れぬ人間の力

大相撲春場所で左肩周辺にけがをし、優勝は絶望とみられた横綱稀勢の里が大関照ノ富士との対戦で勝ち、2敗同士で並んだ優勝決定戦でも連破、2場所連続2回目の優勝を果たした。NHKの実況中継で解説の北の富士さんは勝つという予想はしなかった。専門家も相撲…

1509  ジャーナリズムの役割とは むのたけじさんのこと

《ジャーナリズムとは何か。ジャーナリズムの「ジャーナル」とは、日記とか航海日誌とか商人の当座帳とか、毎日起こることを書くことです。それをずっと続けていくのが新聞。それは何のためかというと、理由は簡単で、いいことは増やす、悪いことは二度と起…

1488 都合のいい「新しい判断」 政治に必要なのは「モラルと思想」

「理性ある動物、人間とは、まことに都合のいいものである。したいと思うことなら、何にだって理由を見つけることも、理屈をつけることもできるのだから」。アメリカ独立宣言起草委員の1人で、アメリカ建国の父ともいわれるベンジャミン・フランクリンの言…

1467 ユネスコ憲章の精神とかけ離れた世界の実態 ガルシンの嘆きはいまも

オバマ米国大統領が5月のG7伊勢志摩サミット参加時に、広島を訪問することを検討しているというニュースが流れた。訪問が実現すれば、現職の米国大統領としてはもちろん初めてである。 オバマ大統領は2009年チェコ・プラハで「核兵器なき世界」を訴え…

1452 3月2日とは 忘れてはならない中国残留孤児問題

1981年3月2日、中国残留日本人孤児の訪日肉親捜しがスタートした。日中の国交回復から9年、経済大国を歩む日本と文化大革命の後遺症に苦しむ中国の実情は、やってきた日本人孤児の人民服姿にも反映されていた。 あれから35年が過ぎている。 その中国…

1444 貶められた無限の可能性 この世で最も美しい言葉……

「言葉はこの世の最も美しいものの一つである―言葉は、眼には見えないが、絶えずわれわれの側にただよってわれわれが弾くのを待っている、不可思議な楽器のようなものだ」 オーストリアの詩人、作家、劇作家のフーゴ・フォン・ホーフマンスタール(1874…

1403 きょうは子規のへちま忌 「言葉はこの世の屑」なのか

正岡子規は1902年(明治35)9月19日に闘病の末、34歳で亡くなった。113年前のきょうのことだ。糸瓜忌である。子規の死を知った親友、夏目漱石の句と子規最後の句は9月1日のブログで紹介した。明日20日は彼岸の入り、子規の句集を読み直した。子規の句に「一…

1402 道義なき現代政治 安保法制に憲政の神様を思う

憲政の神様といわれた政治家がかつて存在した。尾崎行雄(咢堂)である。1912年(大正元)、犬養毅(1932年の5・15事件で暗殺)とともに第一次護憲運動を行い、組閣したばかりの長州閥、桂太郎内閣を総辞職に追い込んだことで知られる硬骨漢であ…

1402 道義なき現代政治 安保法制に憲政の神様を思う

憲政の神様といわれた政治家がかつて存在した。尾崎行雄(咢堂)である。1912年(大正元)、犬養毅(1932年の5・15事件で暗殺)とともに第一次護憲運動を行い、組閣したばかりの長州閥、桂太郎内閣を総辞職に追い込んだことで知られる硬骨漢であ…

1399 飽食の時代を考える 首相動静とミンダナオの事件

新聞に首相動静という欄がある。そこには首相の前日の動きが掲載されている。ちなみに昨日(8日)の夜の動静は「午後6時53分、東京・内幸町の帝国ホテル着。同ホテル内の宴会場『梅の間』で日本経済新聞社の喜多恒雄会長、岡田直敏社長らと会食。午後8時55分…

1393 「現代を憂え、戦後をかみしめる」 ある句会にて

何度も書いているように、今年は戦後70年である。この間、日本は平和を享受してきた。だが昨今、政治の世界では国の防衛について、大きな進路変更を迫る動きがあることはご承知の通りである。そんな政治とは別にして、今年の戦没者慰霊式典で天皇は「さき…

1389 8・15は暗黒の十字路 70年談話に思う

「『8・15』とはまことに無慚なさまざまな体験と自責と怨念と愛憎とのブラック・クロス(暗黒の十字路)である。そして今なおそうであり続けている」。歴史家の色川大吉は『ある昭和史 自分史の試み』の中で、8・15について、このよう述べている。太平…

1381 美を考える ニュースに登場する醜悪な人たち

最近、美について考えることが多い。美という概念からは芸術、哲学から自然界まで幅広いものを感じとることができる。関心事の一つである仏像を見ても、その気品ある姿は美そのものである。私の家の墓地がある寺には薬師如来像がある。顔の表情はとても柔ら…

1379 トマス・モアと安保法制  政治家の理性とは

『ユートピア』の著者、トマス・モア(1478~1535)は中世イングランドの法律家・思想家だ。 イギリス史上、最高のインテリで暴君といわれたヘンリー8世(カトリック信者でありながら6回結婚を繰り返した)の離婚に反対したとして反逆罪に問われ、ロン…

1376 病んでいる日本社会 報道の自由度ランキングは61位

安倍首相の応援団である自民党若手議員の勉強会で、講師として招いた作家の百田尚樹氏とともに衆院議員が沖縄県民世論を批判、「広告を出さないように経団連に働きかけろ、2つの新聞はつぶすべきだ」などと沖縄の2紙(沖縄タイムス、琉球新報)を威圧する…

1361 5月は好きですか ノバラの芳香に包まれて

5月という月を嫌いな人はいるのだろうか。よほどの事情がある人を除けばかなり高い確率でこの季節は日本人にとって人気度は高いだろうと思う。「5月という月は、草花にせよ、鳥とか昆虫にせよ、生命力が躍動して大きく羽ばたく時期です」(新潮文庫『瑞穂…

1357 日本政府の遅い対応 ネパール地震に思う

ネパールでM7・8の大地震が発生し、多くの犠牲者が出ている。そのニュース映像を見ていて、あらためて自然の脅威を感じ、東日本大震災を思い出した人は少なくないだろう。 あの大震災から4年が過ぎている。 しかし、被災地の復興は道半ばであり、原発事故…

1339 おかしな世界と日本 繰り返す栄枯衰退の歴史

国会は「言論の府」といわれる。言論が尊重され、言論によって国政のあり方が議論されている。しかし、現在の国会の姿は異常である。安倍晋三首相や自民党議員が国会で野次を飛ばし謝罪するという醜態を演じ、日本の政治家から品格がなくなっているとしか言…