小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

動物

1276 hana物語(18) たまには私だって

犬を主人公にした小説で一番心に残っているのは、ジャック・ロンドンの「野性の呼び声」だ。アメリカ、カリフォルニアの判事の家でのんびり暮らしていた大型犬バックが、庭師に盗まれてゴールドラッシュに沸くアメリカとカナダ国境へと売られ、過酷な犬ゾリ…

1275 hana物語(17) 問題行動のわけは

hanaの散歩コースだった調整池周辺の遊歩道は、早朝だとだれにも出会わないときも少なくなかった。排泄が終わり、それを拾ってからリードを外して首輪だけにしてやると、hanaは喜んで走り出す。いい運動になるのだが、ちょっと目を離すと遊歩道から…

1274 hana物語(16) 金木犀とともに

私がhanaの骨を庭の一隅に埋めてやろうと思った理由は、家族の「近くに置きたい」という言葉だけではない。私のブログにリンクしている「消えがてのうた part2」のaostaさんの「ボンボンがいた日々」(2012年8月31日)という、絶唱とも…

1273 hana物語(15) 誕生日が過ぎて

hanaは2002年7月1日の生まれで、2013年夏11歳になった。それから30日間でこの世を去ったが、毎年祝った誕生日のことが忘れることができない。それはユーモラスであり、hanaにとっては、ごちそうにありつける記念日でもあったはずだ。…

1272 hana物語(14) 爪楊枝事件

hanaは、犬族の一員として旺盛な食欲を誇っていた。元気なころは朝夕の餌だけでは足りないのか、私たち家族が食べている人間食まで欲しがった。動物病院の獣医さんに言わせると、犬にはドッグフード以外は不要ということだが、よだれを流さんばかりのh…

1271 hana物語(13) 3・11のこと

2011年3月11日の東日本大震災は私の「個人史」の中で特筆すべき事象であり、同じ思いの人たちは少なくないはずだ。11年という短い生涯だったhanaにとっても、衝撃的な大地震だったに違いない。当時我が家で産後の静養中の長女が留守番をしてい…

1270 hana物語(12) 私は末っ子

hanaは小さいころからわが家にしばしば遊びにやってきていたので、3歳過ぎてからわが家に移り住んでもすぐに慣れてしまった。当時、わが家は私と妻、2人の娘の4人暮らしで、hanaは3番目の娘、すなわち末っ子のような存在になった。 外で飼うこと…

1269 hana物語(11) 一度だけの失敗

この文章を書いている私の部屋では、CDから静かな曲が流れている。ヨーゼフ・ハイドンの交響曲44番≪悲しみ≫(哀悼)だ。ハイドン自身が気に入っていた曲で、葬式には演奏してほしいと希望し、1809年にベルリンで行われた追悼際では第3楽章・アダー…

1268 hana物語(10) 私のお母さん

2013年8月5日は、hanaの初七日だった。犬に対しこんな言葉を使うことが適切かどうか分からないが、それまで居間に置いた遺骨と写真を床の間に移した。いずれ土に還す予定だったから、より大切にしたいと思ったからだ。 その夕方、hanaとの散歩…

1267 hana物語(9) 後輩ハナとともに

hanaが旅立ってから、朝の散歩はやめた。その代わりに始めたのがラジオ体操だ。自宅から約200メートル離れた遊歩道の一角に大きな円形の花壇があり、その周囲が広場になっている。ここで近所の人たちが毎朝6時半からNHKの放送に合わせてラジオ体…

1266 hana物語(8) 奇跡の犬

hanaが肝臓がんと診断されたとき、家族全員が間違いであってほしいと願った。しばらくすれば元気を取り戻してくれるのではないか、hanaの散歩の際に度々出会った先輩犬のラブラドールレトリーバーのように、「奇跡」が起こるのではないかと思ったの…

1265 hana物語(7) 短い命を燃焼

人間と飼い犬の強い結びつきは「忠犬ハチ公」の話でよく知られている。飼い主が愛情をかければ、犬にもそれがよく伝わるということなのだろう。 以前読んだ、モンゴメリーの『アンの娘リラ』(新潮文庫・村岡花子訳)という小説の中にもそれを示すエピソード…

1264 犬と猫の受難の話 盲導犬が刺される時代……

最近、新聞に載った「盲導犬がけがをさせられた」という投書と友人がフェースブックに書いた「人を怖がる猫」の話が気になった。「犯罪や事件は時代を映す鏡」といわれるが、2つの動物虐待の事件は、21世紀前半の日本の姿を反映しているようで、暗澹とす…

1263 hana物語(6) 家族として生きた証

ゴールデンレトリーバーは、「金髪の回収犬」という意味があるそうだ。ハンターが撃ち落としたキジなどの獲物をくわえて、主人のもとへ運ぶ役割を担っていたのだ。それが物を拾うことが好きという習性となり、投げられたボールや棒を取ってくる遊びが大好き…

1262 hana物語(5) それぞれの旅立ち

hanaの闘病と死に対し友人からメールやブログへのコメントの形で多くのメッセージが寄せられた。前に書いたが、友人の一人からは「シリウスへの旅立ち」というメッセージをもらった。心のこもった便りの数々は、hanaにも伝わったに違いない。その中…

1260 hana物語(4) 別れの時

私は2006年からブログに興味を持ち、「小径を行く」という題名のブログを書き続けている。このブログでは、時々「hanaのつぶやき」と題して、hanaにまつわる話を登場させてきた。犬にどこまで思考能力があるかどうか議論が分かれるかもしれない…

1259 hana物語(3) シリウスへの旅立ち

hanaとの別れは突然やってきた。夜、息が荒くなったhanaを心配し、次女が居間に布団を運んできて隣で寝たが、次女自身、こんなに早く別れがくるとは思わなかっただろう。 hanaの様子が落ち着いたのを見て、家族は夜11時過ぎには消灯し、就寝し…

1258 hana物語(2) 第1章 思い出の日々 病に倒れて

動物病院でhanaの肝臓に腫瘍が見つかった翌日から、エサは医師の指示で少量ずつを4、5回に分けて食べさせ始めた。しかしドッグフードをエサ用の容器からでは食べようとせず、私たち家族の掌に乗せると、少しだが食べてくれた。散歩にも出る気力はある…

1257 hana物語(1) あるゴールデンレトリーバー11歳の生涯 はじめに

わが家の飼い犬だったゴールデンレトリーバーのhanaが死んで1年が過ぎた。毎日写真では見ているが、最近は夢にも出てくることは少なくなった。そこで、hanaと暮らした日々を思い出すために、あらためて「hana物語」を掲載することにした。(昨…

1255 待宵草が咲いている hanaの死から1年

朝、いつもの散歩コースである調整池の周囲を歩いていると、黄色い花がひっそりと咲いているのを見かけた。帰宅して図鑑で調べると「マツヨイグサ」(待宵草)と分かった。この花はたしか昨年の夏も見た。しかし、わが家で飼っていた犬のゴールデンレトリー…

1254 ペットとともに暮らす時代 「犬」論議に思う

大阪府泉佐野市が犬の糞の放置対策のため導入を検討していた「犬税」について、断念する方向だというニュースを見た。こうした苦肉の策を考えたのは、犬の糞害が相当ひどいということなのだろう。私の散歩する道でも相変わらず糞が放置されているのを見かけ…

1185 シリウスとの対話 遥かなるhanaからのメッセージ

わが家の飼い犬のhana(ゴールデンレトリーバー・雌、11歳)が、私たち家族に別れを告げてから、きょうで5カ月になった。友人から「hanaちゃんは、シリウスへ旅立ったのです」という便りをもらい、そのシリウスが見える日を待っていた。 厳寒の季…

1170 シリウスへ到着の知らせ 夢で聞くhanaの吠える声

夢の中で、音を聞いた人はいるのだろうか。夢は寝ている間に現実のように感じる心象だという。これまで私の夢には色も音もなかった。だが―。飼い犬のゴールデンレトリーバ―のhanaが死んでもう少しで4カ月になる。この間、hanaの夢は見ていない。 家…

1158 hana物語 番外編3 中秋の名月を一緒に見る

今夜は旧暦8月15日の満月で「中秋の名月」だった。15夜とも呼ぶ。この夜に月が雲に隠れて見えないことを「無月」、雨が降ることを「雨月」というそうだが、幸い、このところ好天が続き、今夜も名月が私たちの頭上に輝いた。 庭に出ると、肌寒い。han…

1156 hana物語番外編2 台風接近の中での別れ

台風18号が接近している。きょう15日は朝から強い雨が降っていた。だが、昼近くから晴れ間がのぞいた。hanaの49日には少し早いが、床の間に飾っておいた遺骨を庭に埋めてやることにした。いわば「埋葬」である。その場所は、前から決めていたよう…

1153 hana物語番外編1 白露の季節

はな、ありがとう。 はなが来てくれたおかげで 私たちの世界が広がって 豊かな毎日になったよ。 一緒にお散歩することで 花の香りや季節の変化を感じたり。 人間以外の動物がかわいいと 思えるようにもなった。 はなには感謝することばかりです。 また会おう…

1154 hana物語 あるゴールデンレトリーバー11年の生涯(20)完 輪廻転生~いつの日か

「輪廻転生」。霊魂がこの世に何回も生まれ変わってくるという意味で、多くの宗教でこの考え方が存在するという。私は突き詰めて考えたことはなく、信じてもいないのだが、なぜかhanaが生きている間から「この子は今度生まれ変わるとしたら私たちの子ど…

1153 hana物語 あるゴールデンレトリーバー11年の生涯(19)月命日・猛暑が続く中で

hanaがこの世を去って1カ月が過ぎた。hanaが死んだのは7月30日だから、きょう8月30日は「月命日」ということになる。 仏教用語では「祥月命日」という、一周忌以降の故人の亡くなった月日(命日)と同じ月日のことを指す言葉もあり、ややこし…

1152 hana物語 あるゴールデンレトリーバー11年の生涯(18)たまには私だって

犬を主人公にした小説で一番心に残っているのは、ジャック・ロンドンの「野性の呼び声」だ。アメリカ、カリフォルニアの判事の家でのんびり暮らしていた大型犬バックが、庭師に盗まれてゴールドラッシュに沸くアメリカとカナダ国境へと売られ、過酷な犬ぞり…

1151 hana物語 あるゴールデンレトリーバー11年の生涯(17)問題行動のわけは?

hanaの散歩コースだった調整池周辺の遊歩道は、早朝だとだれにも出会わないときも少なくなかった。排泄が終わり、それを拾ってからリードを外して首輪だけにしてやると、hanaは喜んで走り出す。いい運動になるのだが、ちょっと目を離すと遊歩道から…