小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

人生

1473 羽根つきギョーザと歩んで32年 ニーハオの原点は「後援会」

東京・蒲田の「你好」(ニーハオ)といえば、羽根つき餃子でかなり知られる存在だ。この店がオープンしたのは1983年12月のことで、32年の歳月が過ぎている。オーナーである八木功さん(81)のたゆまない努力がニーハオを成功に導いたのだろう。一…

1452 3月2日とは 忘れてはならない中国残留孤児問題

1981年3月2日、中国残留日本人孤児の訪日肉親捜しがスタートした。日中の国交回復から9年、経済大国を歩む日本と文化大革命の後遺症に苦しむ中国の実情は、やってきた日本人孤児の人民服姿にも反映されていた。 あれから35年が過ぎている。その中国…

1451 「理想の音を求めて」 ピアノ調律師を描いた2冊の本

ピアノの調律師を描いた2冊の本を読んだ。熊谷達也『調律師』(文春文庫)と宮下奈都『羊と鋼の森』(文藝春秋)である。わが家にもほとんど使われなくなったピアノがあり、調律もだいぶやっていない。以前は身近な存在だった調律師もかなり遠い存在になっ…

1447 言葉との格闘 乙川優三郎の現代小説

乙川優三郎といえば、時代小説の作家と思っていた。『五年の梅』や『生きる』という本は私の本棚にもある。その乙川が現代小説にも筆を染めている。最近、そのうち『脊梁山脈』など3冊を集中して読んだ。文芸評論家・作家の丸谷才一は『文章読本』(中央公…

1442 「聖母子像画」に見る美の追求 ダ・ヴィンチとボッティチェリ展

美術とは何だろうと、約500年前の2つの名画を見てあらためて考えた。それはレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519)の「糸巻きの聖母」とサンドロ・ボッティチェリ(1444/45~1510)の「書物の聖母」である。活動時期が重なり、ルネ…

1441 最後の手紙は「僕ハモーダメニナツテシマツタ」 子規と漱石の友情

覚せい剤事件で警視庁に逮捕された元プロ野球選手、清原和博の高校野球時代の同級生、元巨人投手の桑田真澄が清原の逮捕について語った言葉が報道された。友を思う気持ちと悔恨の情が含まれた話だ。桑田の言葉は「友情とは何か」を考えさせるもので、明治時…

1440 人間の心を蝕む覚せい剤 元プロ野球スター選手・清原の逮捕

プロ野球で活躍した・清原和博(48)が覚せい剤取締法違反容疑で警視庁に逮捕された。覚せい剤をはじめとする禁止薬物が日本社会にはびこっていることを象徴したものだ。2009年8月、人気女優が覚せい剤事件で逮捕された。この時、私は覚せい剤につい…

1440 人間の心を蝕む覚せい剤 元プロ野球スター選手・清原の逮捕

プロ野球で活躍した・清原和博(48)が覚せい剤取締法違反容疑で警視庁に逮捕された。覚せい剤をはじめとする禁止薬物が日本社会にはびこっていることを象徴したものだ。2009年8月、人気女優が覚せい剤事件で逮捕された。この時、私は覚せい剤につい…

1438 人生の選択 グローバル化時代の望郷とは

望郷とは、「故郷をしたいのぞむこと。故郷に思いをはせること」(広辞苑)という意味だ。世はグローバル化時代。飛行機をはじめとする交通機関やインターネットという情報手段の発達によって、世界は狭くなった。だから、望郷という言葉はあまり使われなく…

1437 輝いた琴奨菊 相撲人生の満開はこれから

根拠は不明だが、相撲は国技といわれる。にもかかわらず、大相撲はこの10年にわたって日本出身力士の優勝はなく、国技は名ばかりになっていた。白鵬をはじめとするモンゴル出身力士が角界を支えているといっても過言ではない時代が続いている。そんな中で…

1428 「人生最高の日」は 沖縄の得難い体験の共有

寒い季節になると、思うのは南の暖かな地域のことだ。中でも沖縄のことが気になる。沖縄といえば、奄美大島から沖縄に移り住んで16年になる知人がとてもいい話を教えてくれた。それは沖縄の人たちの心根の優しさを示す、文字通り心温まる話である。 知人は…

1428 「人生最高の日」は 沖縄の得難い体験の共有

寒い季節になると、思うのは南の暖かな地域のことだ。中でも沖縄のことが気になる。沖縄といえば、奄美大島から沖縄に移り住んで16年になる知人がとてもいい話を教えてくれた。それは沖縄の人たちの心根の優しさを示す、文字通り心温まる話である。 知人は…

1427 幸あふれる人生 北海道移住の知人が写真展

首都圏から北海道に移住して6年目の生活を送っている知人から、最近、嬉しい知らせが届いた。実は、知人の北海道移住は悩みに悩んだ末の決断だった。だが、北海道の自然はそんな悩みを吹き飛ばした。知人が撮影した北海道の風景写真は多くの人の心に響き、…

1427 幸あふれる人生 北海道移住の知人が写真展

首都圏から北海道に移住して6年目の生活を送っている知人から、最近、嬉しい知らせが届いた。実は、知人の北海道移住は悩みに悩んだ末の決断だった。だが、北海道の自然はそんな悩みを吹き飛ばした。知人が撮影した北海道の風景写真は多くの人の心に響き、…

1408 ヨンキントとユトリロと 感受性強く知的な芸術家たち

詩人の大岡信は、『瑞穂の国うた』(新潮文庫)というエッセーの中で、秋のしみじみとした感じを象徴するのは酒であり、騒がしいビールの季節が終わり、10月は静かな日本酒の季節だという趣旨のことを書いている。 酒がおいしい季節がやってきて、私の部屋…

1366 生き方の結晶・野菜と花 「アウラ」市毛實写真展

「アウラ」と題した写真展を見た。5月26日から31日まで東京・南青山で開かれている市毛實さんの花と野菜に絞った写真展だ。モノクロの光と影を駆使したさまざまな写真からは不思議な生命力が伝わり、会場には深淵な雰囲気が漂っていた。 「アウラ」とい…

1356 福美ちゃんへ 《悲しみを経て》

街路樹の中で特に存在感があるのはけやきである。いまの季節はけやきの緑の葉が目に優しく、その緑に見守られるようにして子どもたちが陽光の中を歩いている。その姿を見て、ふと「福美ちゃん」のことを思った。 私は福美ちゃんとは面識がない。だが、福美ち…

1351 障害を持つということ 『奇跡の人』とつんく♂さんのこと

シンガソングライターで音楽プロデューサーのつんく♂さんが喉頭がんのため声帯を摘出、声を失ったことを母校・近畿大学の入学式で公表した。原田マハ著『奇跡の人』(双葉社)を読んでいる途中にこのニュースを知り、人にとって声を失うことがいかに大変なも…

1324 津波で亡くなった息子供養の観音像 友人のブログから

東日本大震災で、息子2人を亡くした仙台市宮城野区の父親が自力で観音像を建てたという話を友人がブログで紹介している。「舟要観音(しゅうようかんのん)」という2人の名前が由来という観音像には、「2人の息子さんや同地区の300人余の犠牲者に対す…

1319 健さんの死 空に一筋の雲  「ひた向きに生きたい」

「高倉健のようにひた向きに生きたい」いつかの酒席で私はこう話したらしい。人間は自分とは遠い存在に憧憬を持つから、私は酔いにまかせてそう言ったのだろうか。 「現在の暦でいうと、2月はいちばん寒い季節だと思います。その寒い季節の真ん中である2月…

1319 健さんの死 空に一筋の雲  「ひた向きに生きたい」

「高倉健のようにひた向きに生きたい」いつかの酒席で私はこう話したらしい。人間は自分とは遠い存在に憧憬を持つから、私は酔いにまかせてそう言ったのだろうか。 「現在の暦でいうと、2月はいちばん寒い季節だと思います。その寒い季節の真ん中である2月…

1313 蘇ったグレース・ケリー 映画「公妃の切り札」

国の面積が約197ヘクタールとヴァチカン市国に次いで世界で2番目に小さな国が地中海に面したモナコである。人口は3万6千人余とミニ国家だが、金持ちが住む国としても知られ、日本人では元サッカー選手の中田英寿やテニスのクルム伊達らも居住権を持っ…

1310 ラオス―日本―そしてインド ノンさんをめぐる心温まる話

昨今の国際情勢は、きな臭さが増している。中東でのイスラム過激派集団「イスラム国」の動きに呼応したカナダ国会での銃乱射事件は衝撃だった。ロシアとウクライナの情勢も解決の見通しはつかない。 21世紀の地球は戦争の世紀といわれた20世紀とあまり変…

1310 ラオス―日本―そしてインド ノンさんをめぐる心温まる話

昨今の国際情勢は、きな臭さが増している。中東でのイスラム過激派集団「イスラム国」の動きに呼応したカナダ国会での銃乱射事件は衝撃だった。ロシアとウクライナの情勢も解決の見通しはつかない。 21世紀の地球は戦争の世紀といわれた20世紀とあまり変…

1301 国産ウイスキーをつくった竹鶴政孝の生涯 再読『ヒゲのウヰスキー誕生す』

先ごろ、イギリスからの独立の可否を問う住民投票があり、独立反対票が賛成票を上回り、イギリスにとどまることになったスコットランドは、スコッチウイスキーの生産で知られる地域である。18世紀までは、スコットランドの地酒に過ぎなかったウイスキーが…

1251 イルカに救われた人生 時の人になった北海道の笹森さん

北海道でクジラウオッチングを続けている笹森琴絵さんが「日本クジライルカウオッチング協議会」の初代会長になり、朝日新聞の時の人ともいうべき「ひと」(7月16日付)欄に紹介された。 昨年6月、室蘭市で笹森さんにお会いして話を聞いたことがあるが、…

1249 若きエースの肱の故障 田中投手は「勤続疲労」なのか

大リーグ・ヤンキースの田中将大投手が、肘のけがで当分戦列を離れることになったというニュースは衝撃的だった。野球の投手にとって肘や肩の故障は致命的なことが少なくない。それだけに野球というスポーツで肘と肩には負担がかかっているといえるだろう。…

1229 雪に負けず育つオリーブ 新潟で障害者の自立を支援

新潟は豪雪地帯である。その新潟でオリーブ栽培に取り組んでいる知人がいる。障害者の自立支援のNPO「ひなたの杜」を運営する橋元雄二さんだ。新潟市内の耕作放棄地を借りてオリーブを植え、障害者とともに育てているオリーブは順調に育ち、昨年から実を…

1223 「一九四五年に生まれて」 パーキンソン病とたたかう友人の静謐な文章

知人が重い病気になった。現代の3大病といわれるものの1つだ。自覚症状がないままに病は進行し、知人の体を蝕んだ。知人から病の話を聞いて心が沈んでいるとき、パーキンソン病と闘う友人から、1冊の本が届いた。 「一九四五年に生まれて」(龍書房刊)と…

1205 もう一人のレジェンド いまも現役・長野五輪のテストジャンパー

ソチ五輪の男子ジャンプ、個人ラージヒルで41歳の葛西紀明選手が銀メダルに輝いた。この年齢でスキーの第一線を続け、しかも世界のトップの位置を占めているのは驚異としか言いようがない。だれが名付けたのかは知らないが「レジェンド=伝説」という言葉…