小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

ニュース

1199 風が頬を打つ立春の朝 福島の悲惨な現実

「春は名のみの風の寒さや…」という歌い出しの「早春賦」(吉丸一昌作詞、中田章作曲)を思い浮かべるような、立春の朝である。昨日とは一転して、天気は冬に戻ってしまった。ソプラノ歌手・鮫島有美子の「四季」のCDには79曲の最初にこの曲が入っている…

1196 あるジャーナリストの憂鬱の日々 「こんな人がNHKに」

仙台在住のジャーナリスト・松舘忠樹さん(元NHK記者)は、東日本大震災後の2011年12月から被災地の復興の動きを「震災in仙台」と題し、ブログで書き続けている。地道に、丹念に取材したブログは被災地と被災者の姿を追った貴重な記録となっている。…

1195 マー君の契約にため息 重圧との戦いも

無芸大食(最近は小食の方か)の身には、全く別の世界の話のように思ったのは、マー君こと楽天の田中将大投手の大リーグヤンキースへの移籍の話だ。ポスティングシステムで移籍が決まったマー君は、年俸総額1億5500万ドル(日本円で161億5000万…

1188 16歳少女の不屈の志 「わたしはマララ」を読む

パキスタンのマララ・ユスフザイさんは16歳の少女である。同世代でマララさんほど世界に名を知られた少女はいないだろう。女性にも教育の機会をと訴え続け、イスラム過激派のタリバンによって頭を銃撃されたマララさんは奇跡的に命の危機を脱し、2013…

1182 たった一枚の写真でも すがすがしさとおぞましさ

たった一枚でも写真の力は大きい―。そんなことを考えながら、日本橋三越で開催中の2013年報道写真展(東京写真記者協会主催)のグランプリ作品「見せましょう!日本の底力を」を見た。一方、同じ写真でも北朝鮮が国営メディアを通じて公表したNO2・張…

1172 ユーモア精神あふれるものは?間投詞について

イギリスでは、バンザイを意味する言葉として「hooray」という間投詞(感動して、不意に叫んだ言葉)があり、女王陛下万歳は「Hooay for the Queen!」ないし「Hurray for the Queen!」というそうだ。24日に千秋…

1168 非情な天才と差別に耐えた大リーガー 伝記映画で知るやり返さない勇気

米国の伝記映画を見た。伝記映画というのは、実在した歴史上の人物の半生あるいは生涯を描いた作品だが、これまで制作された数多い伝記映画は完全な伝記や史実に基づいたものではなく、制作者によって創作や脚色されることが珍しくないそうだ。それはさてお…

1167 地球温暖化への強い警鐘 フィリピンの台風被害・COP19の比代表の演説

フィリピンを8日超大型台風30号「ヨランダ」(アジア名ハイエン))が直撃、死者は1万人を超えるという情報もある。被害が大きかったレイテ島は、東日本大震災の大津波を思い出させる惨状が広がっている。 折しも、ポーランド・ワルシャワでは気候変動に…

1166 三日月と金星の天体ショー 天は悪事を知っている

きょう11月7日は、二十四節気のうちの「立冬」だ。同じ二十四節気の「霜降」(そうこう)から15日目ごろというが、わが家周辺ではまだ霜が降りる気配はなく、散歩をしていたら汗ばむほどだった。昨日の夕方、西の空を見上げていたら、三日月が右側に、…

1164 一筋の道を行く 3人が歩む世界

日本シリーズでパリーグの楽天がセリーグの巨人に勝って日本一になった。その原動力になったのは、田中将大投手であることは衆目の一致するところだ。日本球界を代表する投手に成長した田中の姿を見ていて、「一筋の道」を歩む他の2人のことを考えた。1人…

1163 野球の神様の遺言 問われるトップの力量

打撃の神様と呼ばれたプロ野球の強打者で、巨人の監督として9年連続日本一(V9)という偉業を成し遂げた川上哲治さんが老衰で亡くなった。93歳だったから、大往生だったといえるだろう。昨夜の日本シリーズ楽天―巨人戦前には、東京ドームで川上さんの死…

1160 心和む曼珠沙華 あまちゃん終わり、やがて悲しき

「曼珠沙華抱くほどとれど母恋し」(中村汀女)=彼岸のころは野一面に、曼珠沙華が真っ赤に咲いている。作者は娘の心にかえって、それを両手いっぱい摘み取った。その心の高ぶりが、母の思い出をさそうのである(山本健吉編、句歌歳時記秋)。 早朝の散歩で…

1157 球こそ遊戯の中心 正岡子規・田中将大・斎藤佑樹・バレンティンの話

2006年8月といえば、もう7年も前になる。夏の高校野球・甲子園大会の決勝戦は早実と駒大苫小牧が1試合では決着がつかず、翌日に再試合の結果、早実が優勝した。その時の両チームのエースは早実がハンカチ王子といわれた斎藤佑樹、駒大苫小牧が2年生…

1155 あるジャーナリストの2年半を迎えての記 裏切られた被災地

「2年半前、あまりの被害の大きさに私たちはたじろいだ。犠牲者の人数もけた違いだった。しかし、この豊かな日本社会だ。ほどなく人々の生活を立て直す力があるはずだ。誰もがそう信じたが、想いは裏切られた。被災地の人々は奥歯に何かがはさまったような…

1154 大震災から2年半の海外での事件 カッパドキアの悲劇

トルコの世界遺産、カッパドキアで旅行中の新潟大学の女子学生2人がゼミ渓谷で男に襲われ、1人が死亡、もう1人は重傷負う事件が起きた。親日的で安全な地域といわれたカッパドキアでもこんな事件があったことに驚いた人は少なくないだろう。ちょうど1年…

1153 hana物語番外編1 白露の季節

はな、ありがとう。 はなが来てくれたおかげで 私たちの世界が広がって 豊かな毎日になったよ。 一緒にお散歩することで 花の香りや季節の変化を感じたり。 人間以外の動物がかわいいと 思えるようにもなった。 はなには感謝することばかりです。 また会おう…

1152 つかの間の喜悦~それはまたつかの間に地に堕ちる 五輪と古代ギリシャ詩人

2020年の夏の五輪(第32回)・パラリンピック開催地に東京が決まった。アルゼンチン・ブエノスアイレスで開催されているIOC総会の中継のテレビ映像を、早朝から見ていた人は多いだろう。歓喜に沸くシーンを繰り返し流すテレビの映像を見ながら、最…

1134 人の生き方を問いかけるアニメ 宮崎駿監督の「風立ちぬ」

どんな世の中でも自分の仕事に打ち込む姿は悪くはない。政治や社会情勢に引きずられることなく、仕事ができれば幸せなことだ。宮崎駿監督のアニメ「風立ちぬ」を見て、そう思った。 私たちも含め、多くの人は時代にほんろうされて生きている。このアニメの主…

1117 ヒースロー空港のトラブル 添乗員の役割は?

添乗員付きのヨーロッパのツアー旅行に参加した仙台市の50代の男性が、イギリス・ロンドンのヒースロー空港に置き去りにされ、精神的苦痛を受けたとして、ツアー元の旅行会社を相手に40万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こしたことが話題になっ…

「乾杯!恐るべし」 日本酒危機の応援条例

酒造メーカー、月桂冠のホームページによると「乾杯」という習慣が一般化したのは、わが国が西洋文明を取り入れ始めた明治・大正期からだという。ビールをはじめとする洋酒も飲まれるようになり、次第に普及したが、明治末期のころの掛け声は「乾杯」ではな…

1107 富士山は特別な存在 ようやく世界遺産(文化)登録へ

富士山を嫌いだと思う人はいないのではないか。日本のシンボルとして、だれでもが美しい山容に畏敬を抱いているといっていい。その富士山がようやくユネスコ・国際記念物遺跡会議(ICOMOS、イコモス)から世界遺産に登録されることになった。これまで富士山…

1106 村上本はなぜ売れる 居酒屋談義2 「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」

村上春樹の新刊本「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」が発売から1週間で100万部を超えたそうだ。発売元の文藝春秋は笑いが止まらないだろう。社員は夏のボーナス増を期待しているのではないか。一方、「1Q84」など多くの村上本を出してい…

1095 たばこ悪者の時代の頑固な友人 米ではついに千円条例

米国最大の都市ニューヨーク市は、喫煙対策強化のために、たばこ1箱当たりの最低販売価格を10・50ドル(約1000円)にすることなどを盛り込んだ条例案を市議会に提出したという記事が先週出ていた。日本でも一時、たばこ1000円説が話題になった…

1091 童心に戻った気球体験だが… 残念なルクソールの事故

エジプトの観光地、ルクソールで21人を載せた熱気球が墜落し、日本人4人を含む19人が死亡した。墜落前に気球から飛び出し(逃げたのか、爆発で飛ばされたのかは現段階では不明)、重傷を負ったパイロットの操縦ミス説が強くなっている。イスラム過激派…

1088 選手の人生狂わす五輪 ピストリウスお前もか

義足のランナーとしてロンドン五輪に出場した南アフリカのオスカー・ピストリウス選手(26)が恋人で弁護士の女性を射殺した事件が注目を集めている。私もこのブログで過去2回、ピストリウス選手のことを取り上げている。殺人事件に加え、ドーピング疑惑…

1080 「いのちの賛歌」とアルジェリア人質事件の被害者たち 尊厳・最高の価値のはずなのに

友人のブログ「冬尋坊日記」の最新の記事にマザー・テレサの「いのちの賛歌」という詩のことが出ていた。その詩を読みながら、アルジェリアのイスラム武装勢力による人質事件のことを考えた。現地でプラント建設に当たっていた日本人を含む多くの命がこの事…

1072 「スマ歩」で忙しすぎる日本人 利器に振り回される日常

「スマ歩」という造語が新聞に出ていた。街中や駅のホームなどで歩きながら携帯電話のスマートフォン(スマホ)の操作に熱中すること(日経新聞1月9日夕刊、スマ歩にヒヤリ!)だそうだ。うまい造語だと思う。それにしても、人ごみの中でスマートフォンの…

1066 2012年大みそかの夕暮れ 常識失われし時代に

夕方、家人が1階から叫んでいる。「西の空がきれいよ」と。あわてて、2階からカメラを持って、外へ飛び出した。きょうは、大みそか。この1年、いろいろなことがあった。愛犬のhanaは大病し、緊急手術を受けた。ふだんなら、私も連れて行ってと追いす…

1064 大リーグで成功した3人の1人 記録と記憶に残る松井が引退

日本球界から大リーグに移って、成功した選手はそう多くはない。日本人初の大リーガーである村上雅則もいるが、成功した3人を挙げれば野茂英雄、イチロー、松井秀喜だろうか。ヤンキースに残った黒田博樹や1年目うまく行ったダルビッシュ有も成功組に入る…

1060 最低の投票率と世界最高齢に思う 時代を象徴する数字

数字のことを書く。一つは16日に投開票された衆院選(小選挙区)の投票率が1996年の59・65%を下回る59・32%と戦後最低を記録したこと。もう一つは、世界最高齢といわれた115歳の米国の女性が亡くなり、京都府京丹後市在住で115歳の木…